エリートの務め | 歴史の裏

エリートの務め

 下積みや恵まれない人のために

 ジャーナリストは人民の味方であり権力の監視者であるから、必然的に反権力にならざるを得ない。新聞は権力の犠牲になりやすい下積みの人や恵まれない人たちに寄り添い、声を出しにくい人たちの言い分を代弁し権力抑制の働きをするのが使命である。だから、政府の言い分をオウム返しに紙面に載せ権力の宣伝機関に成り下がってしまった一部新聞はジャーナリズムとは呼べない。新聞記者は一般国民が手に入れられない情報に接する特殊な職業である意識を持ち、情報を手に入れられない人たちのため最大限、情報を提供すべきである。

安倍晋三さんは「頑張った人が報われる社会にしたい」という。安倍さんは恵まれた環境にいるから、そこそこ頑張れば報われるかもしれないが、国民の6~7割の人たちは、どんなに頑張っても報われないのが現実である。非正規社員が4割にもなろうとしており、正規社員との格差は広がるばかりである。イギリスの歴史家アーノルド・トインビーは次のように言っている。

知的職業の訓練を受けたすべての者が〝ヒッポクラテスの宣誓〟を行うべきです。いかなる職業であれ、新たに知的職業に就く者はすべて、自分の専門的知識や技能を、人間同胞の搾取に向けることなく、彼らへの奉仕に用いる旨を誓うべきです。最大限の利益ではなく、最大限のサービスこそ、知的職業人が目的とし、身を尽くしていくべきです

「医学の父」と言われた古代ギリシャの哲人ヒッポクラテスの最大の贈り物は「ヒッポクラテスの誓い」で、現在でも多くの医大で卒業式の時に朗読されている。高等教育を受けた人たちは、高等教育を受けられなかった人たちのために奉仕することを人生の目的とし使命とするべきであろう。現状がいかにそれとかけ離れているか。新聞記者に限らず、一流大学を出て一流企業に勤め恵まれた環境を手に入れた人たちはすべからく、いい意味のエリート意識を持ち、「ヒッポクラテスの誓い」を行い、恵まれない環境の人たちのために尽くす義務がある。