食材偽装 | 歴史の裏

食材偽装

ミートホープ事件と同根


 食材偽装事件は阪急阪神ホテルを発端に他のホテル、料亭、デパートにも発展した。どこまで広がるか分からない。このままでは日本で扱われている全ての食材を疑ってかからなければならなくなる。新聞は「今日の食材偽装」欄を設け、一覧を載せる事態になるかも知れない。

 この問題の根源はなんだろう。外食産業はなるべく高級のブランド食材を明示し、ブランド志向の客を呼びたいだろうが、コスト削減するため同じ品質でもが安いブランド品を購入したり食材の品質を落としたりする。調理してしまえば客には区別がつけにくいことを逆手に取った〝意図的犯罪〟といってもいい。そうでなければ、系列の複数の店舗で何年にもわたって偽装し続けるわけがない。「誤表示」なんて釈明はインチキに決まっている。一流と言われる料亭では女将か板長が出てきて食材や調理法を解説する。レストランでもウエーターが説明する。食材が違っていればウソの説明をすることになる。「誤表示」なんてありえないではないか。

 この事件を見て、私は2007年に起きたミートホープ事件を思い出した。今回の事件はあれと裏腹の出来事だ。ミートホープ事件は「安い品物を求める消費者」への偽装。今回は「高いブランドを求める客」への偽装。根は1つだ。ミートホープは牛肉100挽肉に豚肉、鶏肉、パンの切れ端などを混て水増し色味を調整するために動物のを混ぜたり、消費期限物のラベルを替えて出荷したり、腐りかけて悪臭を放っている肉を細切れにして混ぜたりするなどの不正行為を続けていた。不正がバレた時、社長は「消費者が安いものを求めるからだ」と開き直った。私はその時、このブログで「安い物を求めたからといって、インチキをやっていいとは言っていない」と書いた。

 今回の食材偽装では、さすがブランドを売りにする高級店ばかりだから、こんな馬鹿げた開き直りをする経営者はいないようだが、内心ではそう思っているかもしれない。要は消費者が自分の舌に自信がなく、「行列のできる店」や「高級店なら美味しいだろう」と思い込むことが根本的問題だろう。行列ができるようになったら必ず味が落ち、客あしらいがずさんになる。高級店に行ったらお高くとまって、客の値踏みをし、客を見下していることに、なぜ気づかないのか。なぜ、自分の財布に見合った、近くのうまいものを食べさせる店で自分の好みのものを食べて満足できないのか。ここにみんなが気づけば高い金を払ってインチ高級店に行かなくてもすむ。