民間事故調
デマを報告してはダメ
福島原発事故独立検証委員会(通称・民間事故調)の報告書をまとめた大塚隆・客員主任研究員の話を3月31日、東京・内幸町で聞いた。報告書は昨年3月11日の事故発生当時、首相だった菅直人氏ら300人以上からヒアリングしてまとめ、2月28日に日本記者クラブで発表。新聞、テレビによって報道された。
大塚氏の話のあと、報告書に記載された菅氏の当時の対応について話題になった。菅氏が「必要なバッテリーの大きさは? 縦横何メートル? 重さは? ということはヘリコプターで運べるのか?」と聞き、同席者が「首相がそんな細かいことを聞くというのは、国としてどうなのかとぞっとした」とし、報告書は菅前首相の行動を「混乱や摩擦のもとになった」と批判。「政府トップが現場対応に介入することに伴うリスクについては、重い教訓として共有されるべきだ」と特記した。この記述に対し出席者から、「同席者」である下村健一内閣審議官がツイッターで反論していると指摘があった。
取り違えて批判
3月4日の下村氏のツイッターは次の通り。
まず、大きく報道された、《電源喪失した原発にバッテリーを緊急搬送した際の総理の行動》の件。必要なバッテリーのサイズや重さまで一国の総理が自ら電話で問うている様子に、「国としてどうなのかとぞっとした」と証言した“同席者”とは、私。但し、意味が違って報じられている。
私は、そんな事まで自分でする菅直人に対し「ぞっとした」のではない。そんな事まで一国の総理がやらざるを得ないほど、この事態下に地蔵のように動かない居合わせた技術系トップ達の有様に、「国としてどうなのかとぞっとした」のが真相。総理を取り替えれば済む話、では全く無い。
実際、「これどうなってるの」と総理から何か質問されても、全く明確に答えられず目を逸らす首脳陣。「判らないなら調べて」と指示されても、「はい…」と返事するだけで部下に電話もせず固まったまま、という光景を何度も見た。これが日本の原子力のトップ達の姿か、と戦慄した。
この通りを調査員に話したとすれば、民間事故調の報告書は事実を取り違えていることになる。故意か過失か分からないが、マスコミがこれを大きく取り上げたことは、「ダメ菅」キャンペーンの片棒を担ぎ、「菅おろし」を企む陣営に加担した結果となる。
民間事故調の資金源は?
民間事故調は、一般財団法人日本再建イニシアティブの検証プロジェクトがまとめた。理事長は元朝日新聞アメリカ総局長のあと主筆も務めた船橋洋一氏。検証委員会は委員長の北澤宏一・前科学技術振興機構理事長はじめ6人。31日の会では、財団がどういう組織、どういう金で支えられているかとの質問が出たが、大塚氏は「それを公開する予定はない。電力会社からはもらっていない」と答えただけだった。