魚介類の放射線汚染 | 歴史の裏

魚介類の放射線汚染

安心できない



東京電力は124日、福島第1原発で放射性物質を処理した後に淡水化する装置から、45立方メートルを超す汚染水が建屋内に漏れ、一部は建屋外の側溝に達したと発表した。側溝は海につながっており、建屋から500600メートル離れた海に流出している可能性もある。ベータ線を出す放射性物質のストロンチウムが1立方センチ当たり10万ベクレル程度含まれている可能性があり、この濃度は海水の濃度基準の10万~100万倍311事故後、海洋汚染がどうなっているか、あまり報道されていないが、やはり、汚染水の流出はは止まっていないというのが真相のようだ。マスメディアは海洋汚染と魚介類への影響についてほとんど報じていないが、国民の健康にとって重要の情報のはずだ。


石丸教授の調査

 東京海洋大学隆教授による「福島第一原子力発電所事故と海産魚介類の安全性」(海洋政策研究財団主催・85回「海洋フォーラム」1129日、東京・虎ノ門海洋船舶ビルで聞いた。石丸さんは海洋科学部海洋環境学科海洋生物学講座を担当しているが、放射線同位元素利用施設長でもあり、プランクトンの研究が専門なのだが、311の原発事故によって、原発による魚介類への影響を調査することになった。

 事故発生直後は大学の品川キャンパスのモニターで調べたが、その後、福島沿岸や沖合の太平洋で船舶による潮流の放射線物質拡散や魚介類への影響を調べている。福島沖は親潮と黒潮がぶつかり、太平洋へと東流しているから、放射線汚染は太平洋の広範囲に及んでいる。放射線物質は拡散されてかなり希釈されると期待されたが、石丸さんの調査によると、それほどでもないという。動物プランクトンから検出される放射性セシウムは311以前は福島第1原発周辺で1キログラム当たり。0.03ベクレルだったが、海洋家研究開発機構の4~5月調査によると、福島第1原発から1950キロメートルと950キロメートルで数ベクレルが検出された。


食物連鎖で濃縮

 海に入った放射性物質はプランクトンに取り込まれ、食物連鎖を通じて魚に移る。大きな魚に移るには時間がかかる。魚食性の魚で汚染レベルは上がり、マダラ、スズキなどの大型魚では約百倍にもなる。大型魚に移るのは約半年後だろうという。魚体中の放射性物質は餌と海水から取り込まれるものと、エラや尿などで捨てられるものがある。新しく取り込まれないとしての生物的半減期は5080日と見られる。その後、放射性物質は表層の生態系から海底の生態系へと移る。魚の糞や死骸の分解物をデトリタスといい、デトリタスを食べるヒトデやゴカイ、ナマコなどがまず汚染される。それを底魚が食べるにはなお時間がかかる。こうして汚染は生態系の中で循環する。

 いわき沖のシラスの放射線セシウム濃度は4月中旬から6月までは高かったが、7月以降は低下している。一方、プランクトンを餌とするマイワシは神奈川~福島と北海道、青森沖太平洋ではあまり低下していない。沖合の小型魚類を餌とするカツオの汚染レベルは低い。福島沖のスズキやアイナメの汚染レベルは、まだ高いレベルにあるものの落ち着いている。しかし、検体によって異常に高いものが出ることがあり、石丸さんは「放射性物質の濃縮というより、移動によるものではないか」と推測している。第1原発沖20㌔圏内は調査できないから、そこの魚が移動してきて異常に高いレベルを示すのだろう。魚には警戒区域も県境もないから、どこそこ沖の魚が安全なんて言えない。


今後は底生生物が危険

 石丸さんは結論として、放射線物質はプランクトンから小型魚、大型魚へ移り、さらにデトリタスとして凝縮して底魚へ移り、海底の生態系内で循環する。堆積物の移動速度は低いため、なかなか拡散・希釈されない。堆積物、底生生物、底魚の中の放射性物質のモニタリングを継続する必要があるという。

 講演を聞いた私の印象は、シラスなど小型の魚類は危険性が低くなったが、半年以上経った現在はそれらを餌にする大型魚が危ない。さらに、今後は底生生物である海草類、ナマコやウニ、貝類、カニ、タコ、ヒラメ、カレイなどが危険である。しかも、前述したように魚には県境なんてないから、危険は拡大している。よく言われるように40歳以上の人は諦めざるを得ないが、成長期にある子供、特に乳幼児にはこれらのものを食べさせない方がいいだろう。