山崎直子さん | 歴史の裏

山崎直子さん

  瑠璃色の地球

 79日、東京・内幸町で宇宙飛行士・山崎直子さんを囲む昼食会があった。山崎さんは今年4月に2週間、国際宇宙ステーション(ISS)に滞在。長期滞在中の野口惣一さんとISS組み立ての共同作業を行った。日本人2人のISS滞在は初めてであり、また女性4人の同時滞在も初めてだった。

 昼食会では、食事後に山崎さんが一連の作業を映像で紹介した後、質問となった。宇宙帰還後に一番感じたことは重力の重さだった。無重力空間にいたので、地球に戻った時、自力では立てなかった。特に頭の重さを感じた。頭を動かすと、体全体が回ってしまう。元に戻るのに1週間かかった。無重力状態にいると、筋力が弱り骨密度も下がる。山崎さんは2週間の滞在だったが、ISSの長期滞在者は毎日2時間のエクササイズを義務づけられていた。走ったり、バネを使っての筋力トレーニング。

 私の質問は、宇宙へ行く前と帰ってからでは、地球への思いが変わったかということ。答えは「自分でもびっくりするほどだった。まるで2次元と3次元の違い。地球では感じられなかったこと、特に太陽の光の強さ。大気に覆われた地球の存在。地球も生き物だと感じたという。昼食会の前に色紙に書いた言葉は「瑠璃色の地球も花も宇宙の子」。私は知らなかったが、松田聖子歌う「瑠璃色の地球」は山崎さんの目覚ましの曲だった。

 「一番困ったことは」の質問には「歯磨き」。水を使えないので、歯を磨いた後は飲み込むしかない。水を使えない点では着るものも同じ。2~3日着たら廃棄する(実際は持ち帰る)。臭わず汗の吸収のいい日本製を持ち込んだという。

 「宇宙をなぜ目指すのか」との問いには「1つは宇宙から地球を見直してみること。もう1つは、人間は思っている以上に可能性のある存在だということを知るため」と答えた。そして、「宇宙へもう一度行きたいか」との質問には「ハイ」と答え、どこまで行きたいか。火星までか、銀河系外まで行きたいか」との問いには「子供のころ(アニメ宇宙戦艦ヤカトを見て宇宙を志した)思い描いた宇宙の夢だから、ゆくゆくは光速を超えて宇宙の果まで行ってみたい」と壮大な夢を披露した。

 演奏した琴の音程が狂ったのは無重力が影響しているのかとの問いには、「そうではないでしょう。地上での音合わせは狂っていなかった。長い間、保管していたので、(宙船の)振動によって狂ってしまったのではないか」と答えた。

 山崎さんは、向井千秋さんのような男っぽさはなくしとやかな女らしい女性だった。受け答えも丁寧で誠実。実物を間近で見ると、テレビで見るよりずっと美人だった。