普天間移設問題
日米関係危機説は迷信
日本外交協会による孫崎享氏の「日米同盟と日本の安全保障」の講演会が3月29日あった。孫崎さんは元外務省情報文化局長、イラン大使で防衛大教授も務めており、鳩山由紀夫首相の諮問機関である国家ビジョン研究会のメンバー。1月5日には鳩山さんにブリーフィングもしている鳩山ブレーンの1人。彼は普天間問題が解決しないと日米関係に危機が訪れるという野党やマスコミの論調はウソであり、普天間問題が解決しなくても日米の友好関係はびくともしない。なぜ、マスコミはそのことに触れないのかと憤慨していた。孫崎さんの論旨はこうである。
アメリカの海外基地のうち30%は日本とドイツにある。そのうち戦略上重要な大型基地に限れば日本はドイツの3倍。アメリカにとって日本の基地は世界戦略上、最も重要である。その中で普天間基地の比重は20分の1であり、アメリカが20分の1のために日米関係を悪化させるはずがない。しかも、アメリカの海外基地について各国負担を比較すると、日本は全体の半分以上であり、イギリスの20倍、ドイツの3倍。日本の基地の重要性はアメリカにとって圧倒的であって、「普天間で日米関係が壊れることはない」(ジョンズ・ホプキンス大学教授ケントカルダー)というのがアメリカ有識者の常識になっている。
私は「鳩山政権は普天間の機能分散化を模索しているようですが、そうすれば、ヘリコプターと海兵隊の機能が十分に発揮されないから、アメリカは受け入れるでしょうか」と質問した。これに対し、孫崎さんは「戦略上、海兵隊を日本に置いておく意味が果たしてあるのだろうか。アメリカは日本国民の選択を尊重する。それが民主主義だからです。日本国民がノーだと言えば受け入れる。そのために日米関係を悪化させるはずがない」と答えた。
他の人の質問に対しても、「アメリカにはいろんな意見がある。その中にはキャンベル(国務次官補)のように普天間問題が日米関係の危機になると主張する人たちもいるが、キッシンジャー、モーゲンソー(シカゴ大学教授)、ターナーのような人たちもいる。特にターナーはアメリカの核搭載艦の艦長をし、NATOの司令官をし、CIAの長官もした人です。そうした人たちは普天間問題で日米関係が悪化することはないと言っている。要は日本人がどういう選択をするかにかかっている。(民主主義国家)アメリカはその選択を受け入れることは間違いない」と答えていた。
孫崎さんは、アメリカの機嫌を損ねると、日本は立ち行かなくなるんじゃないかというのは危惧であって、民主主義を重んじるアメリカは、その国が自分で自らの道を選ぶのが本道であり、最近の外務省の考えやそれを受け入れる政治家たちの行き方が間違っているということを言いたかったのではないか、と私は解釈している。