麻生さんの読み間違い | 歴史の裏

麻生さんの読み間違い

   朗読の禁止

 麻生太郎首相の読み間違いと発言の撤回が政治問題になっている。

 愛読しているブログ「新与太随筆」によると、読み間違いの主なものは

踏襲を「ふしゅう」

頻繁を「はんざつ」

破綻を「はじょう」

順風満帆を「じゅんぷうまんぽ」

低迷を「ていまい」

詳細を「ようさい」

未曽有を「みぞうゆう」

実体経済を「じつぶつけいざい」

焦眉を「しゅうび」

物見遊山を「ものみゆうざん」

有無を「ゆうむ」

思惑を「しわく」

措置を「しょち」

前場を「まえば」

詰めてを「つめめて」

Wikipediaを参照)

なのだという。

 マンガばかり読んでいるので、日本語が分からないのかも知れない。教育ママから「マンガばかり読んでないで勉強しなさい」と怒られるだろう。しかし、それが日本の最高権力者である総理大臣だというのは悲しい。

識者の指摘

 毎日新聞の1127日付夕刊特集によると、杏林大学の金田一秀穂教授は、読み間違いは誰にでもある。しかし、絶対にやってはいけない誤読があるという。それは1112日の日中交流行事のあいさつで「頻繁に首脳が往来」という「頻繁」を「はんざつ」と読んだこと。日中関係で「頻繁」は好意的な意味だが、「煩雑」は「多すぎるという悪い意味になる」と指摘する。

 また、東大先端科学技術研究センターの御厨貴教授は、発言の撤回について「発言の撤回は最高権力者として恥ずべきことだという認識が麻生さんには薄い。首相はよっぽどのことがない限り、発言を撤回してはいけない。撤回すると言うことは、総辞職ものだと思う」という。

 さらに、元経企庁長官の田中秀征氏は首相の発言は内容以前に3つの制約あるという。それは①発言の修正や撤回は許されない②人を傷つけない③品格を保つこと。この3つの制約を軽んじたときに、国内外からの首相への信頼は失われる。

読むだけの政治家

 これらの指摘は正しい。だが、私はマスコミが問題にしていない日本の政治家にとって根本的な問題を指摘したい。それは、読み間違い以前の問題である。なぜ、読み間違うのか。それは、人が書いた文を読むからである。なぜ、自分の言葉でしゃべらないのか。歴代の首相は所信表明演説はじめ国会答弁もすべて役人(実態は課長補佐級)が書いた文を棒読みしている。だから「読み間違い」が起きる。

いくらマンガばかり読んでいても、自分の言葉で話せば、「読み間違い」などあり得ない。「踏襲」という言葉を知らなければ、「受け継いで来ました」と言えばよい。「頻繁」という言葉を知らなければ、「ひっきりなしに」とか「近頃は行き来が多いですね」と言えばよい。「未曾有」という言葉を知らなければ「いままでなかった」と言えばよい。

 アメリカ大統領選の様子をテレビで見た人たちは、オバマさんの演説の迫力に圧倒されたに違いない。あのバカなブッシュでさえ、原稿を棒読みすることはない。常に国民を見据えて熱っぽく語る。日本の政治家にそれを期待するのはムリかも知れない。

 首相に限らず、どの大臣も役人の書いた原稿を棒読みしている。もし、自分のことばでしゃべると、失言(実は本音)してしまい、中山成彬・前国交相のように辞任に追い込まれるからだろう。

 余り知られていないが、国会では原稿の朗読は禁止されている。衆議院規則第百三十三条には「会議においては、意見書又は理由書を朗読することはできない。但し、引証又は報告のために簡単な文書を朗読することは、この限りでない」との定めがあり、参議院規則第一〇三条にも「会議においては、文書を朗読することができない。但し、引証又は報告のためにする簡単な文書は、この限りでない」と定めてある。しかし、日本の国会でこれを守っている議員は皆無である。

本音が出るのが怖い

小泉純一郎・元首相が国連で安保理の常任理事国を拡大し、日本がその一員になりたいと演説したときのことを覚えている国民は多いだろう。彼は下を向いたまま、役人が書いた原稿を下手な英語で棒読みした。だから、小泉演説を聴いた各国首脳は、日本は安保理常任理事国にはなりたくない。だが、演説しなければならないから、演説しているだけだ、と思ったに違いない。

安保理常任理事国は第二次世界大戦の戦勝国だけがメンバーである。戦後60年以上経って、敗戦国の日本、ドイツが国際社会でなくてはならない存在になった。さらに、インド、ブラジル、エジプトの新興国も世界政治に大きな力を持ってきた。こうした国々を加えず、世界平和は論じられない。しかも、国連の経費負担額は日本がアメリカに次いで2位。小泉さんが、もし本当に常任理事国になりたいと思ったのなら、こうした国際社会の変化を、日本語でいいから各国首脳の目を見つめて熱心に訴えるべきだった。

このブログで何度も指摘したが、日本では書いたものや口に出したものに本当のことはほとんどない。本当のことは、行動にしか表れない。だから、麻生さんも本音を探られないため、役人の書いた文を棒読みしているのだろう。それが図らずもマンガオタクの実態をさらけ出す結果となった。