年金のまやかし
税方式なら消費税引き上げ?
政府は5月19日、基礎年金(月額6・6万円)の財源を全額税金でまかなう「税方式」に移行した場合の国民負担を試算し、社会保障国民会議分科会に示した。それによると、①現行と同水準を一律給付の場合は新たに税負担14兆円となり消費税率換算5%②過去の保険料未納分を減額給付なら9兆円で消費税3・5%③過去の保険料納付分を上乗せ給付する場合は40年分の保険料を完納した人の基礎年金に納付分に見合う年金(月33、000円)を上乗せする加算に必要な9兆円など24兆円、消費税なら8・5%の増税が必要だという。
なんかおかしい。だって、税方式にしたって、今まで年金保険料を支払って来た人はその分、税金に振り替えるだけだからプラマイゼロで増税の必要なんかないはず。しかも、国民年金は、今や未納者が4割近いという。税金になれば、その分が完全に徴収できるから税収は上がる。
そして、宙に浮いた年金記録問題で明らかになったことは、従業員が納めていた年金保険料を企業が使い込んで国庫に納めていない実態。さらに、未納企業を救済するため、従業員の給与を少なく支払ったように偽装して完納を指導したという実態が分かってきた。このため年金が少なくなった被害者も多い。税金になれば、こうしたインチキはできなくなる。むしろ、税収が増え減税してもいいくらいだ。増税になるとはどういうことか。この試算にはからくりが潜んでいる。初めに消費税引き上げという意図が見え見えである。
その最大の要因は、企業の年金負担がゼロになること。ふざけちゃいけない。これまで厚生年金は企業が半額負担していたのだから、それは税方式になっても続けるべきだろう。企業の負担をゼロにして、その分、消費税を引き上げるなんてとんでもない。消費税は低所得者層ほど負担が大きい。だから、日本経団連が基礎年金の税方式を推進しているわけだ。まぁ、議員も官僚もタニマチの言い分は聞いて、クズの低所得層からはがっぽり税金を取ろうという魂胆だろう。
もう1つ。見逃してはいけないことは、この方式には年金一元化は入っていない。周知のように、公務員がもらう共済年金は一般企業に勤めるサラリーマンより有利で国庫の負担も大きい。そのことには触れていない。国民は忘れていないが、旧国鉄の共済年金がポシャッた時、それをカバーするために厚生年金と合体した。本当は、旧国鉄はみなし公務員だから、公務員共済年金と合体すべきなのに、自分らは安泰にしておいて厚生年金を痛めつけた。今回も自分たちは痛みを感じないように安全地帯に置いて消費税引き上げを画策しているのだろう。国民は騙されてはいけない。
みなし課税を見直せ
消費税引き上げ前に論議すべきは庶民が払った消費税が全額国庫に入る仕組みを作ることだ。現在は消費者が税金だと思って払っている消費税の中、多分半分くらいは途中で消えている。みなし課税があるからだ。マージン率は小売りが20%、卸が10%。例えば1万円の買い物をして500円の消費税を払ったとすると、小売業者はその20%・100円を国庫に納めればいい。こんなマージン率は実態を反映していない。消費者の払った消費税が企業を潤している。これには「益税」というふざけた名前が付いている。だから、企業にとっては消費税様々だ。内心では消費税引き上げ大歓迎。ITがこれほど発達しているのだから、消費者が払ったら、そのまま国庫に入るシステムを作れば、消費税なんて上げなくてもやっていける。
まぁ、財界が反対し、その意向を受けて政治家と官僚がやらないだろう。