産地銘柄 | 歴史の裏

産地銘柄

 産地銘柄

 酒は灘、お茶は宇治、ソバは信濃、ウナギは浜松、と産地銘柄が権威づけられている。だが、これがまやかしであることは周知の事実である。

 酒の灘は、全国各地から樽外買いしたものをブレンドしており、宇治茶はほとんど静岡産、特に抹茶の6割は愛知県西尾市産である。浜松ウナギは台湾やカナダ産が多い。小田原のカマボコも製造は福島県いわき市らしい。信州ソバの原料は8割が外国産、1割は山梨産、本当の信州産は1割だけ。よく言われるように、ソバを食べて、純日本産は薬味のネギだけというのが実態のようだ。

 最近は産地銘柄の表示が厳しくなって、「鳴門ワカメ」や「浅草ノリ」の銘柄を見なくなった。そのはずで、鳴門ではワカメはほとんどとれず、各地から仕入れて「鳴門ワカメ」の銘柄で出荷していた。ノリの代名詞になっていた「浅草ノリ」もそうだ。現在では、浅草どころか、東京湾でさえノリはとれない。各地のノリをブレンドして「浅草ノリ」としていたからだ。松阪肉も他の産地のものを松阪で1週間ビールを飲ませて出荷しているという。魚や肉のUターン現象もよく知られている。高級品は都会の大市場へ出荷され、産地の料亭やホテルなどは築地などから逆輸入して凌いでいる。

 岩手県で面白い話を聞いた。北海道旅行をした人が土産の北海道産塩辛を買って帰った。包装をほどき、中のビンを見たら、製造元は大船渡市だった。ところが、三陸沿岸では、イカの水揚げが少なく、加工用の多くは北海道産のイカを仕入れているらしい。原料は北海道、加工は大船渡、それを北海道土産として売っている。この場合、どこの産品というのが正しいのだろう。

 外国で土産を買うときもそうだ。かつては「made in Japan」に注意しなければならなかったが、最近では「made in China」に気を付けなければならないようである。