ライブドア問題
株は自己責任にじゃないの?
東京証券取引所は3月13日、ライブドアとライブドアマーケティング株の上場廃止を決めた。ライブドア株は1カ月後の4月14日に上場を廃止され、市場での取引はできなくなる。2145人が参加するライブドア被害者の会によると、被害額は80~90億円になるという。彼らは損害賠償を請求すると息巻いている。
ライブドアが粉飾決算で株主を欺いて投資させたのは、確かに犯罪であろう。しかし、株に投資するということは初めからそうしたリスクを負うということなのだ。今回は企業犯罪だったが、企業倫理の低い現代では、三菱自動車のリコール隠しや、雪印乳業のケースなど、どこの経営者にもそうした傾向がある。意識的犯罪でなくとも不祥事によって株が暴落することはあり得る。株に手を出すということはそういうことなのだ。しかも、ライブドアという会社は「時価総額世界1」を目ざし、本業というより、マネーゲームでのし上がってきた会社だから、普通の常識人から見れば、初めから危うさを秘めていたはずで、そんな会社の株を買うこと自体がリスクであって、それがポシャッたからといって損害賠償請求とは甘ったれるなと言いたい。アメリカでタバコを吸ってガンになったからタバコ会社に損害賠償を請求する訴訟があったが、それと似てるような気がする。
金貸し、株やの本質
だいたい、額に汗をせず、金を得ようという根性が気に入らない。そのためには、本人は勉強したり、苦労したりするのだろうが、社会には何も役立っていない。人間、それでよいのだろうか。私たちが生きていられるのは、生きとし生けるもののお陰である。食料は植物を含め生物を殺して食べる。それによって私たちは命をつないでいるのだ。中でも人間には生活のあらゆる事で世話になっている。人間は1人では生きられない。生活の全般についていろんな人にお陰を蒙っている。社会で生きる人は幾分でもその恩返しをしなくてはならない。それは物作りだけではあるまい。流通やサービスすることによってもできる。職業とはそうしたものであろう。
自分の職業を通じて社会の役に立ち、その結果として報酬をもらうというのが原点である。最近の企業の不祥事を見るに、そうした原点を忘れた経営者を多い。リーダーの企業倫理はどうなっているのか。もちろん、企業としては業績が上がらなければならないだろう。しかし、規模を拡大するにも、その拡大によって人々に自分の会社の良い商品をできるだけ多く提供したいとか、良いサービスを多く提供したいということが出発点であるべきだ。それが、「時価総額世界1」ということが目標になってしまい、何のために規模を拡大するかを忘れてしまう、こんな会社の株を買う奴も同罪だ。
社会の発展・広域化とともに、銀行や証券会社、情報産業など、いわゆる「虚業」の比重が大きくなり、それら企業が経済社会を牛耳るようになってきた。それ自体が逆立ちした社会だということにみんなが気づくべきなのだ。「銀行」や「証券」という言葉が悪い。いかにも、エリートの集まりのような気にさせられるが、本質は「金貸し」であり、「株や」なのだ。一昔前なら、まともな人間は職業として選ばなかったはずだ。「金貸し」の本質はバブルの時に正体を現した。担保のしっかりしない不良債権にいくらでも金を貸した。もっと悪いのは、傘下の不動産金融業に不良債権を世話して、自分は不良債権から逃れた。そして、バブルがはじけると、貧乏人には金を貸さず、国民の税金で立ち直り、自分たちだけうまい汁を吸った。
情報産業も多くの人たちに情報を提供する意味では社会に役立っている。しかし、情報を操って自分らの企業だけのことを考えるとなれば、本末転倒である。
メール問題のからくり
永田寿康衆議院議員の偽メール問題はライブドア事件に咲いたアダ花だ。永田議員の往生際の悪さが民主党を窮地に陥れた。私には永田氏と民主党がはめられた気がしてならない。それは、この問題でいったい誰が得したかを見ると、本質が見えてくる。民主党は今国会でいわゆる4点セット(ライブドア事件、姉歯建築士の強度偽造、防衛施設庁の官製談合、米国産牛肉)で政府を窮地に陥れるために手ぐすね引いていた。自民党は守勢だった。それが偽メール事件ですべて吹っ飛び、自民党は息を吹き返した。
世の中には知恵者がいるもんだ。永田議員といえば、東大工学部出に似合わずこれまで5回も懲罰動議を出された、曰く付きの議員。さらに、民主党執行部は若く、政治的謀略を見抜けない。こうした状況を知悉している知恵者が永田議員に偽メールを持ち込ませようと考えたのだろう。さらに、自民党は小泉さんが首相になってから、独断専行傾向が強まり、民主的手続きを踏まない。どちらかというと、リベラルな人たちは冷や飯を食わさせられている。武部幹事長の息子とホリエモンは仲がいい。メールの内容のようなこともあり得ると国民は考えるだろう。メールが偽だと分かっても武部氏への疑惑は残る。それは小泉体制への打撃でもある。一石二鳥の巧妙な手を考えた知恵者がいると見るのはうがっているだろうか。