薬物速度論の基本である分布容積とクリアランス | 高橋翻訳事務所スタッフリレーブログ

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こんにちは。高橋翻訳事務所(http://goo.gl/25cZv)学術論文翻訳担当の平井と申します。

医学翻訳 ・分子生物学翻訳 ・生化学翻訳「分布容積(distribution volume)とは薬物を投与したときに、その薬物が分布する容積を血液量などで表したもの」といった説明があります。しかし、これはなかなか理解しにくいものです。実際の治療では、薬を投与したときに「何mg投与したら、何mg/dlの血中濃度が得られた」ということしかわかりません。すなわち、この投与量と結集濃度との関係を説明するためには、投与量と濃度という違った尺度を関連づける何かが必要になってくるのです。そのために用いられるのが分布容積です。たとえば薬Aでは12という投与量を注射で投与したら、結果として2という血中濃度が得られたとしましょう。そうすると、残りの10という量が他の部分に分布しているということになります。どの組織中も血中濃度と同じ濃度であると考えると、この薬Aはトータルで6個に分けられていると考えることができます。この6が分布容積なのです。

クリアランスは血中からそれ以外の場所へ薬が移動していく様を表しており、薬を投与された人が単にどのくらいの量の薬を動かすことができるかという指標になるだけでなく、ある一定時間に投与された薬を完全に消失させるのに、理論的にどのくらいの血液量が必要なのかを表したものといえます。表示としては容積/時間(mi/min L/hr)で表すため、クリアランスという能力は血液の量で表されるということです。なお、クリアランスには一般的に肝臓やすい臓が関与していて、全身クリアランスは肝クリアランスと腎クリアランスの和として考えられています。クリアランスを理解するには、定常状態を理解する必要があり、定常状態では「単位時間内に投与される量と消えていく量が同じ」ということになります。

薬物は体内でいろいろな働き方をします。この働き方を解析するために用いられているのがpharmacokineticsで、日本語では「薬物速度論」とか「薬物動態」と訳されています。



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