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抗癌剤の開発は人類の夢で、世界の製薬企業が日々努力を続けています。その結果、強力な抗癌作用のある薬剤が開発されましたが、癌細胞だけに作用するものはなく、正常細胞にも作用して強い副作用が発生します。その上、完全に癌を治癒することは困難を極め、生存率(survival rate)や生存期間で治療効果を判定するしかありません。
こうした状況から米国では、抗癌剤の使用は患者にあまり利益にならないのではないかといった意見が出始め、米国食品医薬品局(FDA)も癌治療の評価に抗腫瘍効果、生存期間とともにQOLのの評価が必要だと指摘しました。日本でも以前は、薬の効果を発揮させるためには多少の苦痛は病むをやむを得ない、との考え方が一部にありました。しかし最近では、医療を提供する側からの治療効果の判定を、患者の人生の充実感や満足度から評価しようというQOLの考えが浸透しつつあります。つまり、「どれだけ長く生きたか」という量的な見方ではなく、「どのように生きたか」という質を考慮するのです。
ただ、このQOLの評価方法では患者の性格や人生観、社会や時代、さらに地域性といったものまで関係してきます。
欧米では患者自身が書き込む多項目の質問票があり、これでQOLの評価を行っている場合がほとんどですが、現状ではQOLの評価方法に一定の基準はありません。評価方法に一定の基準はないものの、QOLを体現している顕著なものにホスピス(hospice)があります。ここでは直る見込みのない癌患者に対して、抗癌剤投与などによる癌治療を行いません。痛みは麻薬の内服で抑え、家族や医療関係者、宗教家などが一緒になって患者の心の苦痛の解消に努めるのです。
一方、今まで手術以外に治療法のなかった病気が、薬によって治せるようになれば、QOLは向上することになります。また、1日に何回も飲まなければならなかった薬が、1回ですむようになればこれもQOLの向上です。そのため、薬による治療の面でもQOLが重視されるようになると思います。
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