後発医薬品を急増させる包括医療 | 高橋翻訳事務所スタッフリレーブログ

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こんにちは。高橋翻訳事務所(http://goo.gl/25cZv)医学翻訳担当の平井と申します。

医学翻訳厚生労働省では包括医療(comprehensive medicine)制度の導入を推進しており、これが普及すれば、後発医薬品(generic drug)へのシフトはより大きくなるでしょう。包括医療制度というのは、従来の初診から検査、治療などの医療行為を個別に評価し、点数をつけて診療報酬が決まっていく制度に対して、患者一人に対する一連の医療行為を一括して評価するものです。疾患ごとに点数が決められ、入院した場合にはその日数によって診療報酬が決まります。たとえば肺炎(pneumonia)で入院したら、その間のX線検査、MRI(核磁気共鳴映像法:magnetic resonance imaging)検査、抗生物質投与などのすべての治療行為は一括して定額となります。どういう治療を行っても診療報酬は一定なので、かつては薬漬けといわれた過度な検査や投薬がなくなり、医療費抑制につながると考えられます。

レントゲン撮影に使われる非イオン性造影剤(non-ionic contract agent)は第一製薬の「オムニパーク」が一般的で年間380億円もの大型医薬品になっています。その薬価(drug price)は1万3575円(300シリンジ 64.71%、100ミリリットル)ですが、後発医薬品のコニカミノルタの「イコパーク」は同じものが9645円です。包括診療の下ではどちらを使っても報酬は同じで上限が決まっているなら、安い方を使ったほうが病院としての利益は上がります。造影剤だけで3割コストをカットできるなら、後発医薬品を使うことにためらいはありません。まだまだ彼我の差は大きいものの、イオパークはすさまじい勢いで売り上げを伸ばしているそうです。

包括医療が定着すれば、後発医薬品市場は大きく伸びることは間違いありません。しかし、包括医療はまだ始まったばかりの試行的段階で、老人医療(medical care for the aged)の一部や、主に大学病院の急性期入院が対象と限定的です。病院経営の問題や、逆に過少医療になりかねない懸念、慢性入院患者への対応など、未解決の問題は山積しており、すぐに普及が進むわけではありませんが、少なくとも後発医薬品のメリットを再確認するきっかけにはなると思います。


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