![医学翻訳 ・分子生物学翻訳 ・生化学翻訳](https://stat.ameba.jp/user_images/20120209/17/t-honyaku/c4/ce/p/t02200147_0300020011783843498.png?caw=800)
日和見感染を起こすのは、菌が強いからではなく免疫力が弱っているからです。たとえば、AIDSのように免疫力が低下する病気にかかっているときや、臓器移植(organ transplantation)のために免疫を抑制する薬を使っているとき、加齢や重症な病気のために免疫力が低下しているときなどに発症します。
日和見感染は皮膚や粘膜(mucosa)に常在する菌が原因となる場合もあります。健康なときにはまったく問題にならないような菌にやられてしまうのです。常在菌は日ごろ使われている抗生物質や消毒薬(antiseptic substance)に耐えて生き残っているので、一般的に薬に対する耐性(tolerance)があります。ですから、常在菌をすべて死滅させるような抗生物質(antibiotic)というのは、かなり強力なものでなければならないことになります。つまり、日和見感染はいったん発病すると、有効な薬剤が限られていることが大きな問題なのです。
また、日和見感染を起こすのは入院患者に多いことも重要です。原因となる菌は医療従事者の身体に付いている常在菌であったり、病院の中で生き残っている耐性菌であったりします。一人の患者に感染した菌が、同じ病室のほかの患者によって運ばれて別の患者にうつされたという、いわゆる院内感染が問題となっています。
ちなみに、1960年代の大学闘争では、本来の主義主張を変えて日和見主義に陥ることを「日和る」と軽蔑していたそうです。ここに感じられえる「弱気になって、本来は耳を貸さないような相手の主張に取り込まれてしまう」というニュアンスから、日和見感染が名付けられたのかもしれません。学生紛争を戦った人の中からは医学界でリーダー的な存在になった人がたくさんいるそうなので、もしかしたらそんな人が名付け親なのかもしれません。