楽器(musical instruments)の話 | 高橋翻訳事務所スタッフリレーブログ

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こんにちは。高橋翻訳事務所(http://goo.gl/25cZv)音楽翻訳担当の池上と申します。

音楽翻訳初回となる今回は、楽器(musical instruments)の話をさせていただきます。



私は翻訳以外に自分でも音楽の演奏をしています。楽器はコントラバス。しかしこの楽器、実は定まった名称がないのです。

クラシックを演奏される方や、よくお聞きになる方なら「コントラバス」と聞けばその楽器の形も思い浮かぶでしょう。ジャズが好きな方だと「ウッド・ベース」と言ったほうが通じるかと思います。たまに「クラシックのコントラバスとジャズのウッド・ベースは違う楽器なの?」と聞かれることがありますが、同じ楽器です。ジャンルによって呼び方が違うのです。

そして「ウッド・ベース」というのは実は和製英語(Japanese-made English)。英語ネイティブの人にウッド・ベースと言っても通じません。アメリカでは「Double Bass」や「Upright Bass」、イギリスなら「Contrabass」という言い方で通じるようです。ちなみに学生時代、英会話の授業でアメリカ人の先生に自分の楽器のことをどんな言い方で表現しても通じず、絵を描いて説明したら「Oh, Big Bass!」と言われてガクッとなったこともあります。

ジャンルによって呼び方が違うだけではありません。厳密に言うと「ベース」も「コントラバス」も、あくまでも音域の名称でしかないのです。「ベース」というのは要するに低音域のことですし、「コントラバス」という名称も、弦楽四重奏でバス、つまり低音を受け持つのがチェロで、さらにその下を演奏する楽器だから「コントラバス」と言われているわけです。「ダブル・ベース」という名称も同じ由来と考えられています。

サキソホン(saxophone)やクラリネット(clarinet)などの、音域(compass)によっていくつか種類のある管楽器(wind instruments)には、音域に応じて「ソプラノ・サックス」や「バス・クラリネット」などと呼ばれるのですが、いずれも最も低い音を出す楽器は「コントラバス・サックス」や「コントラバス・クラリネット」と呼ばれます。このことからも「コントラバス」というのは、あくまでも音域の名前であることが分かります。

この楽器はヨーロッパを起源とするのですが、決まった名称を与えられずに音域の名前だけで通じてしまったから、そのままで来てしまったようです。この楽器が好きで演奏している者にとっては、このあやふやさ(ambiguity)が面白かったりもするのですが。

音楽翻訳コラム担当者紹介
医学関係、音楽関係の翻訳者としての仕事を10年以上続けるかたわら、現役のコントラバス奏者としても活動しています。音楽関連の翻訳では、音楽の知識を生かし、ライナーノーツなどの音楽評論や、子供向けの音楽指導書翻訳まで、幅広い内容に対応が可能です。また、楽器の演奏法に関する表現など、自らの経験を生かし、専門的な内容もわかりやすく翻訳しています。 
株式会社高橋翻訳事務所 
医学翻訳学術論文翻訳音楽翻訳  担当:池上