また警察の御厄介に

 

隣町へ出かける機会があった。

買い物と、小用があって、前日に準備万端整えての小さな旅だった。

 

まず目的地を探さねばならない。

ネットであらかじめ調べておいたので、順調に行くかと思ったが、また忘れ物、姉に電話をかけることをしなかった。

 

小用を済ませた後は、必ず電話する約束だった。

第一目的はすぐ達成できたが、そのあとがすっかり抜けていた。

途中、公衆電話を通り過ぎ、全く気付かなかった。

私は携帯は持たず、いつも公共の電話を利用していた。

 

次の買い物に向かう途中での失態だった。

まず、お店に着いてからはじめて気づいた。

戻るべきか少し迷ったが、買い物を先にすることに決めた。

15分ほどの時間がかかると言われ、ただ待つより姉に連絡しようと店を後にした。

 

さっきの公衆電話に着くと、テレホンカードを入れても入れても出てきたしまう。

何度も繰り返した後、電話機の表示画面に気付いた。

カードとその他の図に、バツ印がついていた。

そこでハッと気づき、3台つながって配置されていたので、隣のハコへ移動した。

 

こんどは電話がつながった。

姉に事の顛末を話し、電話が遅れたことを謝った。

 

その間、約10分から15分ほど、店に引き返すことにし電話を切った。

 

店ではすでに商品が用意され、私を待ち受けていた。

清算を済ませ、そこを後にし、また別の目的地に向かった。

 

そこで大失敗を演じてしまった。

必要品を持ってレジに行き、清算しようとリュックのポケットを探った。

財布を入れておいたのだ。

 

ところが、いくらすべてのポケットをみても、見つかる気配はなかった。

窮地にたたされた。

すでに商品は目の前に置かれ、あとは支払いをするだけだった。

 

思案の末、事情を話し、商品は元に戻してもらい、金品のやり取りは諦めた。

親切な店員さんは、1週間は取り置いてくれると言ってくれたが、断った。

またいつ来られるか分からなかった。

 

消沈、落胆しながら店を出て、恥ずかしさ、悔しさが襲ってきた。

 

さっき、前の店では財布で清算してたのに、どこへ行ったか失ってしまった。

 

しかし、幸運がひとつだけあった。

スイカはしっかり手元に取ってあった。

帰宅には困らない。

 

それでもすべては諦められず、公衆電話ボックスや前の店にもあたってみた。

完璧に見つからない。

 

また閃いた。

交番に行ってみよう。

しかし場所が分からない。

偶然にも、場所を知っている人に出くわした。

 

あとは一目散に、もしかしたらと期待しつつ急いだ。

 

久々の警察官とのやり取りに、何だか被害者だか加害者だか分からなくなってしまった。

係りの人にいろいろ聞かれ、書類に書き込み、すべて終了すると、その人は電話をかけ始めた。

町の中央警察署らしかった。

係りの人は、届け出はないと告げ、私は残念な気持ちを抱え、挨拶を交わしながら去ろうとすると、見つかったら連絡差し上げますと笑顔で返してくれた。

 

帰路につき、駅のホームに立っていた。

何気なく左手を上着の左ポケットに入れると、黒い物が見えた。

次の瞬間、愕然とした。

散々探していた黒い財布が、あったではないか。

 

うれしくなり、顔がほころび、同時に自分の不甲斐なさに呆れかえった。

 

帰宅してから、着替えを済ます前に、姉に大きな声で話す自分がいた。

 

今日の良い出来事

親しい人から電話があった。