『越境者たち』★★★
『怨泊 ONPAKU』★★★
『怪談晩餐』★★★
(満点は★★★★★)




梅雨が明け、本格的な夏がやってきます。
そんな季節を象徴するかのように、今週は2本がホラー、1本がサスペンススリラーです。たっぷりと、胆を冷やして下さい(笑)。
さぁ、今週は3本です!




『越境者たち』は、フランスのサスペンススリラー。


事故で妻を亡くし、心の傷を癒やすことができずにいたサミュエル。
妻との思い出が残るアルプスの山小屋でひとり過ごしたいと、娘を友人に預け、サミュエルは別荘に向かいます。
そこは国境を越えた、イタリアの豪雪地帯。扉を開け、まだ妻の面影が残る部屋を回っていると、人の気配が。隠れていたのは、ひとりのアフガニスタン人女性でした。
彼女の名はチェレー。国境を越えて、フランスの難民施設に行こうとしていましたが、単独で雪山を越えるのは至難の業。チェレーはサミュエルに道案内を依頼しますが、面倒事に巻き込まれるのはごめんと、サミュエルはそれを拒みます。
それでも、独り進もうとするチェレーを見捨てるわけにはいかず、結局、サポートを買って出るサミュエル。
ところが、私設警察のような若者3人が、難民を排除せよと、銃を持って執拗に追ってきます。
サミュエルは、無事チェレーに国境を越えさせることができるのでしょうか…。


移民、難民の問題は、欧米では常に存在する大きな課題。四方を海に囲まれた日本では、正直、なかなか切実に感じることができない問題でもあります。
受け入れに寛容な国には、逆に不寛容な人がいるのも事実で、その拒否感の度合いは高まるのかもしれません。
この映画も、我々日本人が観るより、隣国と国境を接した国々の人が観たほうが、感じるものが大きいのではないでしょうか。
どこぞの大統領が「日本人は外国人が嫌い」と発言して物議を醸し出していましたが、時代は変わっています。ボクらもこういう映画から学んでおくことがあるのではと考えずにはいられません。★3つ。




『怨泊 ONPAKU』は、香港ホラー。


香港の不動産会社でCEOを務めるサラは、投機用の土地を求め、東京を訪れます。
東京の不動産会社の担当は、偶然にも、疎遠になっていた弟のショーンでした。
サラは担当替えを望みますが、交渉に必要な言語をすべて話せるのは自分だけだと、仕方なくショーンと行動を共にすることにします。
ところが、悪いことに、外国の要人の来日が重なり、宿泊先のホテルが取れなくなってしまうんですね。
ショーンが勧めたのは、昼に内見した古めかしい一軒家。あそこは老女が民泊をやっていると言うのです。
気が進まぬまま、サラはその家に泊まることに。
しかし、そこは、サラにとって因縁と怨念の空間だったのです…。


香港産のホラーですが、監督・脚本は、日本人の藤井秀剛。東京を舞台に、めくるめく恐怖が描かれていきます。
確かに、インバウンドで外国人がたくさん訪日。不動産もどんどん買われ、宿泊施設が足りず、民泊も多く利用されている現在。設定やテーマは、まさに今ですよね。
リアリティとまでは言わなくても、そんな身近感があり、そこに恐怖が倍増する要素があるのかもしれません。
因縁と怨念。知らず知らずのうちに、何者かに導かれているとしたら…。怖いです。★3つ。




『怪談晩餐』は、韓国のオムニバスホラー。


「ディンドンチャレンジ」
女子高生のボラ、ヨンビ、ヘユルは、ダンス・ユニットを組む仲良し3人組。
それぞれに悩みを持つ3人が、ある動画サイトを知ります。それは、動画の女性に合わせて奇怪なダンスを踊ると、夢が叶うというものなのですが…。

「四足獣」
女子高生のユギュンは、学業優秀な姉と違って、勉強が苦手。母親の厳しい指導に限界が来ていました。
そんな時、道で出会った何者かがユギュンに囁くのです。「願いを叶えたければ、四本足の生き物を殺せ」と…。

「ジャックポット」
ギャンブル依存性のジノは、カジノでジャックポットを引き当てます。
大金を手にしたジノがタクシーに乗ると、荒天を理由に「この先へは行けない」と、とあるモーテルの前でジノを降ろします。そこでジノが通された307号室は、曰く付きの部屋だったのです…。

「入居者専用ジム」
高級マンションにある、24時間利用可能なスポーツジム。ところが、ある事故をきっかけに、深夜の利用が禁止されたのです。
ルールを守らない居住者に降りかかる、恐ろしい出来事とは…。

「リハビリ」
消防士のジヨンは、任務中に大怪我を負ってしまいます。
意識が戻ると、そこは無機質なリハビリ施設のベッドの上。スピーカーからは、過酷な指示が響きます。
時間内に達成できなければ、脳死状態に陥ると。ジヨンは不自由な体を懸命に動かすのですが…。

「モッパン」
人気大食い系YouTuberのもぐもぐ。以前、新進気鋭のライバル、ユラの動画をフェイクだろうと揶揄。家に呼んで対決したところ、体調の悪かったユラは失態を犯してしまいます。
そのユラがまた配信を始めたと知り、もぐもぐは再びのフードファイトを提案したのです…。


スマホ用の縦読みコミック、ウェブトゥーン。韓国で人気のサイトがカカオウェブトゥーン。そこで連載されていたホラー漫画を、5人の監督が実写映画化。6本のオムニバスにしたのが、この作品です。
簡単にあらすじを書きましたが、題材がまさに“今”ですよね。そのあたりが、若者を中心に人気を得た理由なのかもしれません。
短編映画はテンポと着地点が重要。そんな意味でも、この6本はよくできていたと思います。★3つ。