『郷愁鉄路 台湾、こころの旅』★★★
『潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断』★★★
『方舟にのって イエスの方舟45年目の真実』★★★
『フェラーリ』★★★
(満点は★★★★★)




7月になりました。
2024年も折り返し点を過ぎたことになります。
6月の試写の本数は、わずかに5本。半年で63本しか観られていません。
これは例年の約2/3。後半で巻き返すべく、時間の使い方を工夫しないと。
さぁ、今週は4本です!




『郷愁鉄路 台湾、こころの旅』は、台湾の鉄道ドキュメンタリー。


台湾の南の下を西から東へ、ぐるっと回って走る南廻線。
1985年7月に開業し、延伸工事を重ね、全線開通になったのが1992年10月。台湾鉄路公司が所有、運営する単線の鉄道です。
特筆すべきはその景色。山を抜け、海沿いを走り、素晴らしい車窓からの眺めが楽しめます。
しかし、工事は難航を極めました。全長97.15キロのうち、トンネル区間が38.9キロ。多くの犠牲も伴っての開通でした。
また、2020年に全線が電化され、ディーゼル列車やSLといった風情ある車両が走らなくなってしまうと。そこで、台湾ドキュメンタリー映画のシャオ・ジュイジェン監督が、4年の歳月をかけて南廻線の駅長、運転士、工事関係者、さらにファンを取材、撮影。それを1本にまとめたのがこの作品です。
鉄道好きは、日本だけじゃなく、世界各国にいるんですね。同じ趣味、趣向を持つ人なら、まさに国境を越えて楽しめると思いますョ。★3つ。




『潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断』は、実話に基づくストーリー。


第二次世界大戦中の1940年10月、イタリア海軍所属の潜水艦、コマンダンテ・カッペリーニが港を出ます。
地中海からジブラルタル海峡を抜けて、大西洋へ。作戦任務は、イギリス軍の海上物資輸送を断つことでした。
艦長はイタリア海軍で最も無謀と言われた、サルヴァトーレ・トーダロ少佐。しかし、艦内の士気は高く、みんな、海の男としての誇りと気概に満ち満ちていたのです。
そんな時、国籍不明の貨物船を発見。海上ルールに反していたため、撃沈したのですが、中立国ベルギーの貨物船、カバロ号だと判明。
九死に一生を得た乗組員たちが、救命ボートでコマンダンテ号に近づいてきます。敵国イギリスに物資を届けようとしたのかと問われると、黙り込む乗組員たち。「ファシストめ」と陰口を叩くものもいます。
狭い艦内、食料にも限りがある。中立国とは名ばかりかもしれない人間を収容するのは危険が大き過ぎます。
それでもサルヴァトーレ少佐は、彼らを安全な港まで運ぶ決断を下したのです…。


イタリア映画。史実に基づく物語です。
これまでの潜水艦ものと違い、戦闘シーンや艦内のパニック状況にどう対応するかが主ではなく、兵士個々の心理描写に重きを置いているのが特徴。いわゆる“心の声”も多く聞こえてきます。
潜水艦は、昼は敵から見えないよう、海に潜って航行するもの。それをせずに、堂々とイギリス海軍のいる海を通るコマンダンテ号。無防備航行の目的を、敵に伝えてはいるものの、攻撃してこないとは限りません。部下の命を危険にさらしかねない艦長の判断は、果たして正しかったのかという映画です。
戦争は狂気の沙汰。そんな中で、“人として”という言葉が何度も頭に浮かんでくる。そんな映画です。★3つ。




『方舟にのって イエスの方舟45年目の真実』は、TBS制作のドキュメンタリー。


1980年、日本中を騒然とさせた「イエスの方舟」事件。
千石イエス(本名・千石剛賢)なる人物が、若い女性を集めて、彼女たちを洗脳、ハーレムのような共同生活を送るカルト教団、それが「イエスの方舟」だとマスコミが報じたのです。
東京の国分寺に拠点を置いていた「イエスの方舟」ですが、報道後は全国を転々とし、所在の発覚を防いでいました。しかし、千石イエスが持病の心臓病で救急搬送されると、警察、マスコミの知るところとなり、女性たちは家に帰されます。
千石剛賢は逮捕されるも不起訴となり、騒動は沈静化。女性たちから“おっちゃん”と呼ばれ、親しまれていた千石イエスは、2001年12月に死去。そのまま解散したかと思われていた「イエスの方舟」ですが、45年経った今も拠点を福岡に移し、共同生活を送っていたのです。
映画は、彼女たちに取材を敢行。「イエスの方舟」の真実に迫ります。
リアルタイムで事件を知っていたボクは、興味津々で、試写を観させてもらいました。
“正体”を決めつける描き方はしていませんが、宗教絡みの事件が多い昨今、宗教とは何か、カルトとは何か。線引きは?それを判断する目を、社会は、あなたは持っていますか?と問われている気がしました。
“真実”は、あなたが観て、そして判断してみて下さい。★3つ。




『フェラーリ』は、イタリアの高級自動車メーカー・フェラーリの創始者、エンツォ・フェラーリの物語。


ドライバーとして活躍後の1947年、フェラーリ社を創設したエンツォ・フェラーリ。
妻のラウラはトリノの資産家の娘で、共同経営者として、エンツォの事業に多額の資金を援助していました。
ところが、1956年に愛息のディーノが、幼くして病気で亡くなると、夫婦の仲に亀裂が入ります。
エンツォは愛人であるリナとの二重生活を始め、ふたりの間に息子ピエロが誕生。そのことをラウラは知らずにいたのです。
エンツォの情熱とは裏腹に、フェラーリ社の業績は悪化。売却の話が現実味を帯びてきます。
悪いことはさらに重なり、エースドライバーが事故死。エンツォは窮地に追い込まれます。そんな時、エンツォが起死回生の一手に選んだのが、イタリア全土の1000マイルを舞台にした公道レース、ミッレミリアでした。
新たなドライバーと臨むこのレースに、エンツォはすべてを賭けるのですが…。


実在の人物の波乱の人生を描いた映画。
ちなみに、フェラーリ社の現副会長が、ピエロ・フェラーリです。
二重生活を隠して通していたエンツォですが、ある出来事からラウラの知るところとなる。家族の、また恋愛の物語としても、ハラハラドキドキの展開になっていきます。
それでもエンツォは、毎朝、ディーノと両親のお墓参りをしてから出社していたといいますから、周りのみんなを愛していたのでしょう。
時に冷徹に映る、稀代の経営者の素顔。フェラーリ好きやカーレースファンでなくても、スリリングに楽しめるはずです。★3つ。


Xは@hasetake36