『朽ちないサクラ』★★★★
『新・三茶のポルターガイスト』★★★
『フィリップ』★★★★
(満点は★★★★★)




6月も半ばを過ぎたのに、梅雨とは無縁の暑さが続きます。
ただ、こう湿度が高いと、それが原因で熱中症になる“梅雨型熱中症”というのがあるそうです。
涼を取りたくなったら、映画館へどうぞ。気持ちよく冷えてますョ(笑)。
さぁ、今週は3本です!




『朽ちないサクラ』は、柚月裕子の警察ミステリー小説の映画化。


愛知県警の電話がひっきりなしに鳴っています。
原因は、女子大生ストーカー殺人事件。被害者は、管轄の平井中央署に相談していたにもかかわらず、被害届の受理を先伸ばしにされ、その間にストーカー犯に殺されてしまったのです。
その先伸ばしの理由が、なんと署内の慰安旅行。
地元の米崎新聞がこのことをすっぱ抜き、世間の知るところとなり、抗議の電話が殺到。
愛知県警の広報課に勤める森口泉は、電話の応対におおわらわ。上司の富樫もなぜ米崎新聞だけがそのことを知ったのか、首を傾げるばかり。
しかし、泉には心当たりがなくはなかったのです。
というのも、警察学校時代の年下同期の磯川が、平井中央署に勤めており、磯川が泉にこのことをこぼし、それを泉が親友で米崎新聞に勤める津村千佳についもらしてしまったのです。
「大丈夫。絶対記事にはしないから。信じて」と約束した千佳でしたが、こうなってしまっては、千佳を疑うしかありません。
千佳を問い詰める泉。自身の潔白を証明しようと、独自に調査を始める千佳。
その1週間後のことでした。千佳が変死体で発見されたのです…。


「自分が千佳を信じていたら、千佳は死ななくてすんだかもしれない」。
泉は後悔と自責の念にかられます。
刑事でも警察官でもなく、一般職の泉が、親友の死を明らかにしようと動くのですが、その先に考えられないような警察の闇が待っているという…。面白かったです。
あらすじは、ほんの触りの部分。公式サイトの人物相関図を見てみて下さい。登場人物は他にもたくさんいて、警察と公安、カルト宗教など、様々な要因が複雑に絡みあっていきます。
泉は警察の暗部を知ったことで、あえて懐に飛び込もうと職を辞し、改めて警察官になることを決意します。その後の活躍が、続く小説『月下のサクラ』に書かれています。
映画もシリーズ化されるかもしれませんね。楽しみです。★4つ。




『新・三茶のポルターガイスト』は、話題となった心霊ドキュメンタリー映画の続編。


東京・世田谷の三軒茶屋にある芸能プロダクション“ヨコザワ・プロダクション”。この芸能事務所が持つ「ヨコザワアクターズスタジオ」こそが、問題の場所。
ここでは、身も凍るような心霊現象が起きると言います。
それを映像でとらえたのが、昨年3月に公開になった『三茶のポルターガイスト』です。
しかし、奇怪な出来事はその後も続いていたということで、続編が作られました。
今回は東京工業大学の助教や超心理学者を交え、事の真偽を追求します。
1作目を観ていなかったのですが、予告編を見て「観たかったなぁ」と思っていたところに、続編の試写の案内が。ワクワクしながら観させてもらいました。
映像に写った心霊現象が本物かどうかは、あなた自身の目で確かめてみて下さい。
今年2月に亡くなった、叶井俊太郎さんの最後のプロデュース作品。弔意を込めて、★をひとつ増やしたいと思います。★3つ。




『フィリップ』は、ポーランド人作家の自伝的小説の映画化。


ポーランドのワルシャワに暮らす、ポーランド系ユダヤ人のフィリップ。
恋人のサラとダンスの舞台に立ったところを、ナチスが急襲。アクシデントで舞台袖に引っ込んでいたフィリップ以外、家族もサラも、皆、銃殺されてしまいます。
2年後の1943年、故郷を捨て、ドイツのフランクフルトに居を移したフィリップは、自身をフランス人だと偽り、高級ホテルの外国人ウェイターとして働きます。
女性客の多くがナチスの上流婦人。夫は戦地に赴いており、孤独なマダムたちをフィリップは次々と誘惑し、肉体関係を持つこと。それがフィリップの“復讐”だったのです。
ところが、ある日のことです。プールサイドで知的美人のドイツ人女性と出会います。彼女の名はリザ。
「口説いて、娼婦にして、捨ててやる」。
親友のピエールにそう宣言して、リザに近づいたフィリップでしたが、彼女の純粋な心に触れたフィリップは、本物の愛に目覚めてしまうんですね。
しかし、戦火は拡大。過酷な運命に、ふたりは翻弄されるのでした…。


ポーランド人作家のレオポルド・ティルマンドが、自伝的小説として書いた「Filip」。
1961年に一度は出版されるも、すぐに発行禁止となり、それから60年。2022年にオリジナル版の出版が叶い、映画化もされました。
ユダヤ人であることを隠し、フランス人としてドイツで暮らすも、身分は“外国人”。外国人男性と恋愛関係になったドイツ人女性は髪を切られ、蔑まされることに。それゆえ、フィリップに弄ばれても、マダムたちは口外することができません。
逆に、ドイツ人女性と関係を持った外国人男性は死罪となり、フィリップの仲間たちも無惨に殺されていきます。
そんな中を“生き延びる”フィリップ。彼の心の中を想像するだけで、複雑な思いが駆け巡るはずです。特にリザとの間で下した決断は…。
実在の人物です。ラストシーンのその後が気になって仕方ありませんでした。★4つ。