『ジョン・レノン 失われた週末』★★★★
『不死身ラヴァーズ』★★★★
『夢の中』★★
(満点は★★★★★)




GWはいかがお過ごしでしたか?
先週の『Pick Up Movie!』はお休み。試写で観た映画がありませんでした。
今週からまた再開です。お付き合い下さい!
さぁ、今週は3本です!




『ジョン・レノン 失われた週末』は、ドキュメンタリー。


ザ・ビートルズのメンバーとして、亡くなった今も、世界中にファンがいるジョン・レノン。
彼は2度結婚していて、最初の妻、シンシア・パウエルとの間にはジュリアンが、再婚したオノ・ヨーコとの間にはショーンという、ふたりの息子がいます。
アルバム『ダブル・ファンタジー』を共作するなど、仲睦まじいイメージのヨーコとジョンですが、ファンの間では有名な18ヶ月、“ロスト・ウィークエンド(失われた週末)”というのがあります。
これは、ふたりが別居していた73年秋から75年初頭までのことで、この間、ジョンはふたりの個人秘書を務めていた、メイ・パンという中国系アメリカ人の女性と暮らしていたのです。
かつてジョンが代表のひとりだったアプコ・レコードの受付として勤務したメイは、そのクリエイティブな才能をヨーコとジョンに気に入られ、ふたりの個人秘書に抜擢されます。
すると、ジョンとの関係がギクシャクし始めた頃、ヨーコから、ジョンとの交際を勧められたと言います。
戸惑いながらもジョンを受け入れ、始まったジョンとの関係。ヨーコには“火遊びの勧め”だったのかもしれませんが、ジョンはヨーコが思っていた以上にメイを愛し、同居生活が始まります。
映画では、貴重な映像と共に、メイ・パンの証言によって、“失われた週末”が明らかになっていきます。
その間、シンシアとジュリアンとも親しくなったメイのおかげで、ジョンはジュリアンとの再会が叶い、またソロとしても充実の作品を生み出していくんですね。
結局、ジョンはヨーコのもとに戻るのですが、真の愛があった日々は、偽りではなかったと。あくまでメイ・パン側からの話ですが、赤裸々に語られているだけに、真実味を帯びて伝わってきます。
今作の中にも登場する、今でも仲のいいジュリアンとの関係性がそのことを裏付けているような気もしますが、真相はいかに?
50年後の告白。「私の物語は私が書く」というメイ・パンの決意。
ジョン・レノンのファンには必見のドキュメンタリーです。★4つ。




『不死身ラヴァーズ』は、高木ユーナの人気コミックの実写映画化。


長谷部りのは、病弱だった幼少期に、元気と勇気をくれた甲野じゅんに、“一目惚れ”。「じゅんくんこそが運命の人だ」と信じ込みます。
中学生になったりのは、じゅんと再会を果たすことに。陸上部の後輩になったじゅんに、りのは何度も「好き」を伝え、遂にじゅんの口から「俺も長谷部先輩のことが好きです」と言われたのですが、その瞬間、じゅんが消えてしまったのです。まるで幻を見ていたかのように。
その後も、じゅんは、りのの前に現れます。高校の軽音楽部の部長として、車椅子の男性として、バイト先のクリーニング屋さんの店主として。しかし、両思いになった途端、じゅんは消えてしまいます。
そして、また甲野じゅんは現れます。今度は大学の同級生として、りのの前に現れたのです…。


ボクの大好きな『ちょっと思い出しただけ』(22年)の松居大悟監督最新作。
主演の長谷部りの役は、JRAプロモーションキャラクターも務める、見上愛が演じています。
これまでにも、いくつかの作品で見かけてはきましたが、主演作としては初めて。いやぁ、いい役者さんですね。
感情の起伏はもちろん、腑に落ちない出来事に遭遇した時や、じゅんが好きでたまらないいくつもの心情を、実に豊かな表情で表現しています。
“思い込み”と“信念”は、表裏一体。タイトルの如く、いつまでもどこまでも“好き”を貫き通せるなんて、幸せだよなぁと。重い恋愛好きのボクには、よーくわかる(笑)。
この映画を観た男性は、きっと、りのの親友の田中という男性のことが気にかかると思います。いいヤツなんですよ、田中。
りのにとって、田中が消えないでよかった…。
心からそう思います。
構想から10年だそう。ハイテンションな流れとは裏腹に、登場人物たちの優しさが、じわっと沁みてくる映画だと思います。★4つ。




『夢の中』は、“異色の青春幻想譚”。


雨の晩、血の付いた顔で、ずぶ濡れになってタエコの前に現れた男、ショウ。
タエコは、体を売って生計を立てている若い女性。
夜が明けると、ショウはタエコに言います。
「俺のこと、ここで匿ってくれない?」。
ショウを受け入れるタエコ。
ショウはカメラマンのアシスタント。モデルのアヤと付き合ってはいたものの、アヤに見合う男でないことにコンプレックスを感じていました。
一方、タエコは生きることに何も感じることができずにいたのです。
タエコはショウに言います。
「私の最期、綺麗に撮って下さい」と…。


あらすじを上手く書けませんでした。
“異色の青春幻想譚”としたのも、作品のキャッチフレーズをそのまま引用しています。
ただ、タイトルの通り、夢の中のような流れなので、夢同様、話の筋つまが合わなくてもいいとなれば、あらすじを上手く書けないのも道理かと。
何が現実で、何が虚なのか。何が真実で、何が嘘なのか。信じるから裏切られる。それでも信じたい。
何かから逃げてきたショウも、生きている実感のないタエコも、おそらく、今の生きづらい世の中を生きる若者の象徴なのかなと。
映像美の作品でもあります。感じる映画だとしたら、ハマる人にはよりハマるのかもしれませんね。★2つ。

Xは@hasetake36