『エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命』★★★
『システム・クラッシャー』★★★
(満点は★★★★★)




先週紹介した、映画『あまろっく』に出演されていた佐川満男さんが、公開直前の4月12日に亡くなっていたとの報道がありました。
主人公の父親(笑福亭鶴瓶)が経営する鉄工所のベテラン職人、高橋鉄蔵役を演じていましたが、本当に味のあるいい演技でした。
新聞によると、撮影の最中から体調はあまりよくなかったとか。そんなことは微塵も感じさせず。
ただ、病院のベッドに横たわるシーンがあったのは、今思うと…。
昭和歌謡のスター歌手でもありました。これが遺作だそうです。お疲れさまでした。心よりお悔やみ申し上げます。
さぁ、今週は2本です。




『エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命』は、イタリアの史実をもとにした映画。


1858年、ボローニャのユダヤ人街で暮らす、モルターラ一家。
ところが、この家の7歳になる息子のエドガルドが、突然、ローマ教皇が派遣した兵士に拉致され、連れ去られてしまったのです。
聞けば、エドガルドは産後まもなくキリスト教の洗礼を受けており、枢機卿の命で、キリスト教の神父になるための勉強をしなくてはならないと言うのです。
ユダヤ教の一家に生まれたエドガルドに、一体いつ、誰がキリスト教の洗礼を与えたのか?
家族から引き離された息子を取り戻そうと、両親は奔走しますが、立ちはだかる宗教的な壁は、あまりにも高かったのです…。


150年前のイタリアで起きた、誘拐事件。
当時、絶対と言われていた教皇法のもとでは、これは“誘拐”などではないと、協会側は思っていたことでしょう。
映画は、息子を取り戻そうとする両親の姿と、同年代の少年たちと、キリスト教の教えの中で暮らすエドガルドの心の葛藤が描かれています。
長い歳月が、少年をどう変えていったのか。青年になったエドガルドの変貌ぶりも見処のひとつです。
我々日本人には、馴染みの薄い宗教観かもしれませんが、教義を正義とした社会問題は、日本でも起きてますもんね。
そんな目線で観ると、異国の昔の事件であっても、理解が深まるのかもしれませんね。★3つ。

映画『エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命』公式サイト






『システム・クラッシャー』は、ドイツ映画。


9歳の少女、ベニー。
父親から受けた暴力がトラウマとなり、ひとたび怒りだすと手がつけられないほどの暴れよう。
母のビアンカもお手上げ状態で、様々な保護施設に預けられますが、どこに行っても手に負えないと、拒絶されてしまいます。
そんな中にあっても、決して諦めることなく、優しく接してくれていたのが、社会福祉課のバファネでした。
当然のように登校も拒否していたベニーに、バファネはミヒャという登校付き添い人の男性を見つけてくれます。次第に心を開くベニーでしたが、それでも怒りの感情は抑えきれません。
ある日のこと、施設内で包丁を振り回したベニーは、救急隊によって鎮静剤を打たれ、病院に運ばれてしまいます。
閉鎖病棟か、精神病院か。そんな選択を提示される中、ミヒャは森の中での1対1の生活を提案するのでした…。


ピンクが大好きな、一見普通の女の子、ベニー。
しかし、その暴れっぷりは尋常ではなく。
ベニーは幼い頃、父親からオムツを顔に押し付けられたのがトラウマになっていて、特に顔を触られるのが大嫌い。スイッチが入ると大パニックになるのです。
ママに会いたい。そんなシンプルな願いが叶わず、負のスパイラルにはまっていくベニー。
明確な解決策がないのが現実で、映画の結末も、観る人によって、きっと感じ方は様々だと思います。そのへんが評価の分かれ目になりそうな1本です。★3つ。