『アイアンクロー』★★★★
『毒親 ドクチン』★★★
『フィシスの波文』★★★
『ブルックリンでオペラを』★★★★
(満点は★★★★★)




4月になりました。
桜も咲いて、ここからは天気もよく、一気に春めいてきそうです。
新年度の始まりです。2024年のスタートが上手く切れなかった人も、ここからリスタート!
これからも、たくさんの映画があなたに刺激をくれるはずです。人生を満喫したいですねっ。
さぁ、今週は4本です!




『アイアンクロー』は、実話に基づくストーリー。


1960~70年代に日本でも活躍したプロレスラー、フリッツ・フォン・エリック。
握力は120キロを超えたと言われ、その巨大な手で相手の顔面や腹部をわしづかみにする。これが必殺技、“鉄の爪”=“アイアンクロー”。プロレス界に、一大旋風を巻き起こした人気のプロレスラーです。
フリッツには6人の息子がいましたが、長男は幼い頃に事故死。父の夢は、次男のケビン、三男のデビッド、四男のケリー、五男のマイク、六男で末っ子のクリスに託されます。
父の期待を背に、活躍を見せる息子たちでしたが、1984年にデビッドが来日中のホテルで亡くなると、他の兄弟たちにも次々と不幸が襲いかかり、生きているのは次男のケビンだけ。エリック家は“呪われた一家”と呼ばれてしまいます。
一体、彼らに何が起きたのか?
そこには、プロレスのエリート一家が背負う宿命とも言える、栄光と苦悩と挫折があったのです…。


フリッツ・フォン・エリックの日本での活躍は、ボクが小学生の時ですね。
「逃げろ、逃げろ!うわぁ、掴まれた!」
幼心に、もんどり打つプロレスラーの苦悶の表情に、恐怖を覚えたものです。ジャイアント馬場やアントニオ猪木が、圧倒的強さを誇る時代ですからね。悪ガキだったボクは、友達に「鉄の爪~っ」とやっていたのも懐かしい記憶です。
あ、イジメじゃないですョ。あくまで遊びです(笑)。
また、デビッドが来日中のホテルで亡くなった事故も、鮮明に覚えています。屈強なプロレスラーが何故?と不可解な死に謎めいたもの感じたものです。
そんな一家の数奇な運命を描いた映画ですが、ケビン役のザック・エフロンを始め、俳優陣の肉体が凄い!役作りとはいえ、ここまで仕上げるかといった感じの鋼の体。
実際の兄弟と同じ衣装、同じポーズでの写真がありますが、瓜二つですから。
昭和世代は是非、ご覧になってみて下さい。あの頃がきっと甦ってきますから。
ひとつだけ。ネタバレになったらごめんなさい。救いはあります。とても大きな救いがあります。安心して劇場へどうぞ。★4つ。




『毒親 ドクチン』は、韓流ミステリー。


女子高生のユリ。
ユリは母ヘヨンの愛情をたっぷりに受けて育ちます。
と言えば聞こえがいいのですが、ヘヨンのユリへの干渉は度を越えていて、アイドル候補生の友人イェナと仲良くすることも許されず、ユリは母親のことで、ずっと頭を悩ませていたのです。
成績優秀なユリが、模擬試験の日に登校せず、見つかったのは、湖畔のキャンプ場に置かれた車の中。練炭自殺を図ったらしく、遺体で発見されたのです。
取り乱す一方で、絶対に娘の自殺を認めないヘヨン。
それどころか、ユリの様子を心配し、ユリを呼び出していた担当教員のギボムを殺人容疑で訴えたのです。
ユリの死の真相は?ユリの心の中にあった、ある思いとは…。


“毒親”というのが、韓国で社会問題になっているとか。
日本でも“モンスターペアレンツ”なんて言葉が誕生して相当経つし、子供の虐待もあとを絶たないのが現実です。
その原因と、対処法こそが、この映画のキモで、書いてしまうとネタバレになってしまうので控えますが、ユリの気持ちを考えるとあまりに切なく…。
優等生で、勉強もできるユリが、自分を殺して、見せる笑顔。ヘヨンはヘヨンで、母の愛情を惜しみなく注いでいるから、娘は幸せだと信じきっているわけです。
あなたの家庭は大丈夫ですか?黄色い信号が点っているなと感じているなら、きっと学びがあるはずです。ご覧になってみて下さい。★3つ。




『フィシスの波文』は、“文様”を巡るドキュメンタリー。


草木や動物、空、宇宙など、自然をモチーフにデザインされる文様。
日本で文様を扱う代表格は、京都にある唐紙屋長右衛門。今年で創業400年を迎える老舗です。
その“唐長”の11代目、千田賢吉氏の仕事に始まり、黒谷和紙、京都の葵祭、祇園祭、現存する最古の唐紙の襖を持つ南叡山養源院、武者小路千家の官休庵、代官山のインテリアショップを訪ね、旅は空路ヨーロッパへ。
イタリア北部の川沿いに約70キロ続くカモニカ渓谷には、1万年前から描き続けられたという岩絵が。また、ローマのサンタ・マリア・コスメディン聖堂には、唐長文様に通じるモザイクがありました。
そして、最後は北海道二風谷のアイヌ集落へ。アイヌの人たちは、自然への畏敬と感謝が強い民族。生活様式のすべてに文様が施されている、と言っても過言ではありません。
正直、とてもマニアックで、すごく専門的な映画です。一般に広く受け入れられるかと言えば“?”ですが、文様に携わっている人にとっては、体系化された貴重な映像だし、きっと新たな発見もあるのでしょう。
ただ、歴史の重さ、継承の重要性は、文様に関心がなかった人でもわかるはずです。
ちなみに、フィシスとは“あるがままの自然”という意味だそう。興味のある方は是非。★3つ。




『ブルックリンでオペラを』は、ロマンティック・コメディ。


パトリシアは、NYのブルックリンで精神科医として働いています。
バツイチで、息子ジュリアンがいるパトリシアですが、人気の現代オペラの作曲家、スティーブンと再婚しています。パトリシアはスティーブンの主治医でもありました。
実はスティーブン、もう5年も新しい作品が書けていません。
「自分の殻を破って、外の世界へ飛び出すの」。
パトリシアにそう言われ、渋々、愛犬リーバイとの散歩に出たスティーブン。
途中で寄り道したバーで、スティーブンはカトリーナという女性と出会います。
カトリーナの仕事は曳船の船長。これも何かの縁だと彼女の船に乗り込むと、カトリーナは服を脱ぎ始め、「私、恋愛依存症なの」と、戸惑うスティーブンを押し倒したのでした…。


面白かったです。
発想がすごい(笑)。
根幹にはオペラがあるので、間違いではないけれど、タイトルがボクに想像させたイメージと、映画の内容はちょっとズレてたかなぁ。
この映画では、息子のジュリアンと、その彼女テレザとの恋物語もあって。
テレザの父親が相当な変わり者なんですが、上手くそれぞれの男女の物語を描いています。
スティーブンがチャーミングで、ちょっとリーバイに似てるんですよね(笑)。リーバイもいい味出してて。
人生はいつ、どんなきっかけで変わるのか、確かにわからないから面白い。新年度のスタートに、おすすめの1本です!★4つ。