『COUNT ME IN 魂のリズム』★★★★
『12日の殺人』★★★
『ブルーイマジン』★★★
『MONTEREY POP モンタレー・ポップ』★★★
(満点は★★★★★)




ご存じのように、『君たちはどう生きるか』がアカデミー賞の長編アニメーション賞に、『ゴジラ―1.0』がアカデミー賞の視覚効果賞を受賞しました。
前者は21年振り2度目、後者はアジア初の快挙です。
スポーツのみならず、映画まで。すごいなニッポン!
さぁ、今週は4本です!




『COUNT IN ME 魂のリズム』は、ドラムに特化した音楽ドキュメンタリー。


クイーンのロジャー・テイラー、ディープ・パープルのイアン・ペイス、ピンク・フロイドのニック・メイソン、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのチャド・スミス、ポリスのスチュワート・コープランド、ザ・クラッシュのニック・“トッパー”・ヒードン、アイアン・メイデンのニコ・マクブレインらに加え、シンディ・ブラックマン・サンタナ、エミリー・ドーラン・デイヴィス、サマンサ・マロニー、ジェス・ボーウェンといった女性ドラマーら、総勢19名の世界的ドラマーが、ドラムの魅力を語り尽くすドキュメンタリー。
ドラムは、リズムセクションとしての、バンドの屋台骨とも言える存在で、イメージとしては“縁の下の力持ち”?ボーカルやギターとは、また違った魅力を持つ楽器であることは間違いありません。
リズムとか、ビートといったものが人間に欠かせないのは、そもそも心臓の鼓動に命が動かされてるからじゃないのかなと。
レゲエのリズムが心地いいのも、心臓の拍に近いと言うし。
興奮し、躍動すると“心臓が高鳴る”と表現しますよね。ドラムの演奏にもそんな魅力を感じるんじゃないかなぁと、勝手に想像しています。
右手と左手と、同時に別のことをやるのが苦手なボクは、それが緩やかな?和太鼓を叩いていたことがあります。と言っても自己流の盆踊りの太鼓です(笑)。それでも区の依頼を受けて、よく太鼓を叩きに行ってたんですョ。
ドラムはそこに足が加わりますもんね。憧れちゃいます。
映画は、専門的な話も出てきますが、知識がなくても楽しめるのと同時に、ドラマーとドラムの出会いの物語でもあり、それもまた興味深いんですよ。
あなたも箸でお皿を叩いたり、そんな経験、ありませんか?yesと答えた人は、それだけで観たほうがいいかも(笑)。
細胞が躍動する。そんな1本です。★4つ。





『12日の殺人』は、フランスのサスペンススリラー。


2016年10月12日の夜。
友人宅のパーティから帰宅途中だった21歳のクララが、突然夜道で何者かにガソリンをかけられ、ライターで火をつけられて殺されたのです。
ヨアン率いる警察の捜査チームがすぐに犯人探しに着手しますが、クララの男性関係は派手で、誰から恨みを買ってもおかしくなかったよう。
そこで、クララの交際相手だった男たちを次々に調べ上げますが、最終的にはみんな“シロ”。事件は迷宮入りの様相を見せ、チームは解散を余儀なくされてしまいます。
3年後、ヨアンはベルトランという女性裁判官に呼び出されます。犯人は男性だという先入観を捨てて捜査を再開するよう指示されたのです。
新たにナディアという女性捜査官も加わると、新たな視点も生まれるようになった捜査チーム。
果たして、事件は解決するのでしょうか…。


実際にあった未解決事件を題材にした映画です。
最初の捜査チームはみんな男性刑事で構成されていて、異性関係が派手だった被害者を怨恨の線で捜査。犯人は男性だと決めつけていたわけです。
しかし、女性裁判官のベルトランや、新人の女性捜査官であるナディア、クララの親友だったナニーら女性の言葉に、ヨアンはハッとさせられる訳です。
ナディアは言います。「罪を犯すのも、捜査するのもほぼ男性って変ですよね。男の世界ね」と。
フランス映画だなというもやもやを残す1本。それが、この作品に対する好き嫌いの境目になるかもしれませんね。★3つ。





『ブルーイマジン』は、日本、フィリピン、シンガポール合作の青春群像劇。


俳優志望の斉藤乃愛。
彼女には消し去ることのできないトラウマがありました。それは映画監督から受けた性暴力です。
誰にも言えず、ひとりで抱え込んでいた乃愛でしたが、親友・佳代の音楽仲間である友梨奈の性被害を相談されたことがきっかけで、どこかに相談できる場所はないかとネットで検索。ブルーイマジンの存在を知ったのです。
ブルーイマジンは、性暴力やDVなどに悩む女性たちがルームシェアをするシェアハウス。日本人のみならず、外国人も身を寄せ、傷を癒していたのです。
乃愛は友梨奈と一緒にブルーイマジンを訪れます。そして始まった、新たな生活。
すると、ひとりの女性がやってきます。俳優志望の凜です。話を聞けば、彼女もまた映画監督から性暴力を受けたと。それも加害者は、乃愛と同じ人物だったのです…。


最近もニュースになってましたよね。演技指導と称して、俳優志望の女性に性的行為を強要した映画監督のこと。再逮捕され、容疑者は黙秘しているとか。
映画の中では、乃愛の兄が弁護士で、兄にだけは打ち明けていた乃愛でしたが、兄からは消極的なアドバイスしか受けることができず。
そんな乃愛が、同じ境遇の仲間と共に立ち上がり、声を挙げるのですが、簡単には世界は変わらない。それは映画の中だけではない現実かもしれません。
それでも、ひとつの小さなきっかけで、大きなうねりが生まれてきたのも事実です。踏み出す一歩の大切さを教えてくれる作品です。
こんなテーマが“タイムリー”だなんて、そんな評価がなくなる社会を望みたいものです。★3つ。





『MONTEREY POP モンタレー・ポップ』は、77年に日本でも公開になったライブ・ドキュメンタリーの4Kレストア版。


1967年6月16日からの3日間、アメリカのカリフォルニア州モンタレーで開催された野外コンサートが「モンタレー・ポップ・フェスティバル」。
ベトナム戦争が泥沼化し、アメリカの若者の日常が死と隣り合わせになると、反戦や、愛と平和を訴えるようになります。それが“フラワー・ムーブメント”であり、ヒッピーと呼ばれるカウンターカルチャーの誕生でした。
モンタレー・ポップ・フェスティバルは、“Music,Love&Flowers”を旗印に掲げ、30組以上のミュージシャンが出演。20万人以上の観客を動員しています。
出演者には、ジャニス・ジョプリン、ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス、ジェファーソン・エアプレイン、オーティス・レディング、ママス&パパス、サイモン&ガーファンクル、ザ・フーらがいて、その貴重なライブ映像を観ることができます。
ママス&パパスのジョン・フィリップスが、昔からの音楽仲間であるスコット・マッケンジーに書いた「花のサンフランシスコ」がテーマ曲。
“もし君がサンフランシスコへ行くなら花で髪を飾っていって”と歌うこの曲は、まさにこの時代のアメリカを、このフェスティバルを歌っているのです。
ステージはもちろんですが、この映画では、観客に相当な割合でスポットを当てています。ファッションと、時代を牽引する若者のパワーのようなものを、音楽と同様に残したかったんじゃないかなと。
温故知新。世代を超えて感じるものが、確かにあると思います。★3つ。


Xは@hasetake36