『コンクリート・ユートピア』★★★
『シャクラ』★★★★
『マイ・ハート・パピー』★★★
『無理しない ケガしない 明日も仕事! 新根室プロレス物語』★★★★★
(満点は★★★★★)




新年あけましておめでとうございます。
2023年は、157本の新作映画を観させてもらいました。
いつも言うように、映画の評価は個人の嗜好によるところが大きいので、ボクの満点や低評価はひとつの感想に過ぎません。
紹介するのはメジャーでない作品も多いので、「こんな映画があるのか」と興味を持ってもらえれば、映画に恩返しができるのかなと思っています。
今年も、ご愛読よろしくお願いします。
さぁ、今週は4本です!




『コンクリート・ユートピア』は、韓国のパニックスリラー。


世界中で、突如として起こった地盤の隆起。韓国のソウルも例外ではなく、一瞬にして街は壊滅状態となります。
周辺で唯一無事だったのが、ファングンアパート。あちらこちらから避難民が押し寄せ、建物の中はパニックに。
すると、ある部屋から火が出ます。危険を顧みず、消火器を持って火中に飛び込んでいったのは、902号室に住むヨンタクでした。
マンションの会議で住人以外は追い出すことに決まり、住民代表を誰にするかとなった時、その果敢な行動から、ヨンタクが選ばれます。
さらに、防犯隊長には602号室のミンソンが選出されます。ミンソンは新婚で、妻は看護師のミョンファです。
これで住民の結束が固まったかに思われたのですが、生活物資も尽き始めると、人々の間にギクシャクした空気が流れ出します。外から虎視眈々、このマンションを狙う者も当然いるわけで。
内圧外圧に立ち向かう中、ヨンタクの力が次第に強まってくると、彼の本当の素顔が見えてきたのです…。


元日の能登の地震を連想させるかもと、公式サイトには注意書きがありました。まずは、お伝えしておきます。
極限状態に置かれた人間が、いったいどんな行動を取るのか。人間らしさを保つことができるのか。“人間の本質をあぶり出すパニックスリラー”とありました。
物語のカギを握るのは、イ・ビョンホン演じるヨンタク、ミンソンとミョンファ夫婦以外にも、婦人会長を務める207号室のグメ。
最後まで人としての信念を全うしようとする809号室に住む男性のドギュン。
903号室の住人ながら、久々にマンションに戻ってきた若い女性のヘウォンらがいます。
パニック映画としてだけでなく、ストーリーに仕掛けもあるので、ドキドキハラハラは最後まで続きます。
自分ならどうするでしょう?
架空の問いに、答えは見つからないのかもしれません。★3つ。





『シャクラ』は、香港・中国合作の武侠アクション。


中国・宋の時代。互助組織である丐幇(かいほう)の幇主・喬峯(きょうほう)は、正義感に満ち溢れ、信頼に厚く、武芸にも長けた、強いリーダーでした。
ところが、副幇の馬大元が何者かに殺害されてしまいます。
妻の馬康敏は、喬峯が犯人だと言うのです。
さらに、喬峯が漢民族ではなく、実は契丹人であることも暴露。事実、喬峯は養父母に育てられていました。
自身の潔白を声高に訴えることもせず、すべての関係を断ち切って旅に出る喬峯。
その目的は、真犯人とその狙いを見つけること。そして、自身の出自についての真実を知ることにあったのです…。


いわゆる、中国の時代劇。面白かったです!
あらすじは、実にサラッと書きましたが、ひとつ難点を挙げれば、登場人物がものすごく多いこと(笑)。それも重要人物であろうキャラがたくさんいるので、そのへんの把握が大変かも。
ただ、喬峯はメチャメチャ強いんですよ。剣術はもちろんのこと、拳法の達人なので、気でも相手を吹き飛ばしちゃう。とにかく圧倒的な強さを誇ります。
このあたりは日本の時代劇もそうですよね。ひとりで、何十人もいる敵を、バッタバッタと斬り倒していく。爽快でしょ?
ボクらは観ていて、喬峯がいい人なのはわかります。勧善懲悪。で、悲しいかな、大切な人が犠牲になったりもして…。
原作は中華圏では有名な武狭小説「天龍八部」。4人いる武芸者の1人、喬峯にスポットライトを当てた脚本となっています。
製作、監督、主演はドニー・イェン。
日本の時代劇ファンに加え、正月からスカッとしたい人にもおすすめです!★4つ。





『マイ・ハート・パピー』は、韓国の愛犬物語。


ミンスは愛犬家。仕事が終わると、愛犬のルーニーに会うため、脇目もふらずにまっすぐ帰宅するほど。
そんなミンスには恋人がいます。CAのソンギョンです。
ミンスはソンギョンにプロポーズ。快諾したソンギョンですが、ひとつ黙っていたことがあると。それは犬アレルギー。ソンギョンはミンスに心配をかけまいと、ルーニーに会う時は薬を飲んでいたんですね。
その事実を知って、ショックを受けたミンスは、悩みに悩んだ末に、ルーニーを里親に預ける決意をします。
力になると手を差し伸べてくれたのは兄のジングク。しかし、ジングクはカフェを潰したばかり。かなりの金銭的問題を抱えていました。
車にルーニーを乗せて、ミンスとジングクは里親探しの旅に出るのですが…。


公式サイトにある予告編を見てもらうとわかるように、ルーニーの里親を探すはずが、叔父の犬を預かることになり、食肉にされそうな犬を助け、捨て犬を拾い、保護犬を請け負い。逆に、どんどんとワンちゃんが増えていきます。
里親候補も実に様々。犬は無償の愛を人間に捧げてくれる動物ですから、本当に大切にしてくれる人ならいいのですが、なかなか全幅の信頼を置ける人との出会いというのは難しく。
果たして、兄弟はこのワンちゃんたちをどうするのか?結婚は大丈夫なの?というお話。
可愛いばかりではなく、韓国ペット事情の、悲しく、厳しい現実も垣間見えます。
とはいえ、ロードムービーの側面もあり、笑いもたっぷりの1本。愛犬家ならずとも楽しめそうです。★3つ。





『無理しない ケガしない 明日も仕事! 新根室プロレス物語は、プロレス・ドキュメンタリー。


北海道の東端に位置する町、根室。そこに、2006年、アマチュアのプロレス団体が旗揚げするんですね。
サムソン宮本率いる、新根室プロレスです。
代表のサムソン宮本の本業は、オモチャ屋さん。
実弟のオッサンタイガーを始め、多くの地元で働く人たちが参加。
3メートルを超える、アンドレザ・ジャイアント・パンダの誕生や、サムソン宮本のお決まりのギャグに、会場は大盛り上がり!
地元・根室の顔になろうかというその時、サムソン宮本を病魔が襲います。平滑筋肉腫という難病のガンでした。
13年目を迎えた新根室プロレスでしたが、試合後、サムソン宮本の口から告げられた“解散”の2文字とその理由に、観客も言葉がありません。
それでもサムソン宮本は闘います。引退試合はプロレスの聖地、新木場の1stRING。ここで13年間の思いを込め、13番勝負に挑んだのです。
翌20年9月、サムソン宮本は55歳の若さで永眠。
映画は、その後の新根室プロレスをも追いかけていきます。
コロナ禍もあり、なかなか思うような活動ができなかった新根室プロレスですが、サムソン宮本の遺志を継ぎ、3年後の22年10月、彼らは再び新木場・1stRINGに姿を現したのです。
タイトルの「無理しない ケガしない 明日も仕事!」は、新根室プロレスのスローガン。
みんな、それぞれに仕事を持つアマチュア軍団ならではの掛け声です。
中には、心の病を持つセクシーエンジェルねね様や、いわゆるゴミ屋敷に暮らす大砂厚など、今の社会にどこか生きづらさを感じているような人たちをも仲間に引き入れ、生き甲斐を作ってきたサムソン宮本。
プロレスへの愛と、人への愛に満ちた、ひとりの男の生きざまを描いたドキュメンタリー映画です。
やっていることはB級に見えるかもしれませんが、その実と志は超S級!
感動のプロレス物語。新しい年の始まりに、ぜひ観てほしい1本です。
打ち込めることがあるって、なんて素晴らしいんだと感じるはずです。満点!★5つ!



Xは@hasetake36