【アニメ】蒼き鋼のアルペジオ 劇場版 | ふるの のブログ

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アニメ、マンガ、音楽がメインの記事になります。政治ネタも若干・・・。なるべく楽しいブログにしたいですね。

アニメやドラマ、映画が名作となるには、その作品の作られ方と
して2種類あるように思う。

©Ark Performance/少年画報社・アルペジオパートナーズ

ひとつは、カリスマ的な才能のある監督が作品を引っ張って作る
場合。


あとひとつは、才能のあるスタッフ、キャストが最高の仕事をし
て作り上げる場合。


特に、2番目の場合で、奇跡的に面白い作品が出来上がる事の方
が多いような気がします。


「蒼き鋼のアルペジオ」は、正にその好事例だと思う。


これまで、何回かブログで取り上げてきていますが、その度に感
じるのは、スタッフの作品愛。

©Ark Performance/少年画報社・アルペジオパートナーズ

そしてキャストの入魂の演技が作品に正に魂を吹き込んでいると
思えました。


TVシリーズを通して見て、怒涛の様に劇場版2作も続けて見ま
した。


作品の良さを自分なりの考察するにあたり、一週間考える期間を
作ってみた。(それだけ慎重に考えてみたいと思ったから。)


まずは、原作の素晴らしさ、面白さ。


©Ark Performance/少年画報社・アルペジオパートナーズ


・・・と言いながら、実は原作漫画を読んだことが無いのですが。


ヒロインのイオナの性格やキャラクターの設定などがアニメオリジ
ナルになっているということはウィキペディアなどで調べると分る
んですが。(笑)


それでも、基本の設定、世界観は原作がすべて提示しているもの。


まずは、作品世界を支える設定で「疑似科学」の設定が優れている
ところ。疑似科学、というのはSF作品でよくでてくる「ワープ」
とかの、現在の科学では証明できない、言わばでっち上げの科学設
定の事です。


つまりは、「ウソ」なわけですが、その「ウソ」が良くできていれ
ばできているほど、作品に納得性というか、作品密度が上がるもの
なのです。


あと、その疑似科学のネーミングセンスも欠かすことができない要
素です。


例えば、「機動戦士ガンダム」では「ミノフスキー粒子」というい
かにもありそうな物理学的物質が登場します。


「蒼き鋼のアルペジオ」でも、そういったネーミングにまで凝った
疑似科学が登場します。


ざっと上げるだけでも・・・

「メンタルモデル」
「ナノマテリアル」
「概念伝達」
「振動弾頭」
「クラインフィールド」
・・・などなど。


「蒼き鋼のアルペジオ」の優れているのは「ミノフスキー粒子」の
ような固有名詞を使わず、一般名詞によるネーミングが採用されて
いる事です。


「クラインフィールド」なども、「クラインの壺」といった物理学
に興味のある人なら「あ」と思うようなネーミングになっているの
です。


「メンタルモデル」も非常に凝っています。


人類に立ちふさがる敵である「霧の艦隊」が何故過去の人類の戦争
で稼働していた軍事関連艦船の形態をしているのかは解説されませ
んが、そのメカニズムの中で、外界とのコミュニケーションをとる
インターフェース部分が人型(なぜか女性)をしているという設定。


©Ark Performance/少年画報社・アルペジオパートナーズ


戦艦の擬人化とも言える彼女達ですが、単独での行動も可能だった
り自由度は高いようです。


人型となり、人類とコミュニケーションをとる中で、彼女達の感情
がどう変化するか(「感情」らしきものがプログラムされている様
ですが、時間経過の中でそのプログラム自体が学習をしているよう
に見える)がこの作品のひとつのキモと言えます。


彼女達はコアとなるプログラムが体の中にあり、体自体はナノマテ
リアルで構成されていて、おそらく人類の体の構造を模しているの
で食事や汗、涙などの分泌もあって一見人間と殆ど変わりないとい
うところが、中々ご都合主義的(誉め言葉)ではあります。

©Ark Performance/少年画報社・アルペジオパートナーズ

これらの原作の設定、世界観を前提に、アニメの製作スタッフは、
もっとシリアスな方向に作品の舵を取りました。


監督の岸さんはコメディなども得意なようで、若干コミカルな表情
を見せる原作のイオナなどもそのまま出演させる選択肢もあったん
でしょうが、もっと無機的に、無垢な少女としての性格を前面に押
し出し、自身の存在の意味、艦長の千早群像に対する気持ち、など
に葛藤するイオナを描き出して、彼女を無二の、天使的に超絶かわ
いいヒロインを創出しました。(この辺かなり感情的だなあ・・)


©Ark Performance/少年画報社・アルペジオパートナーズ


また、イオナ以外のメンタルモデルや、潜水艦イ401の人間のク
ルーたちなど、この作品の登場人物は、すべてキャラクターの個性
が立っていて、いわゆる添え物扱い的なキャラクターが殆どいない
というのも、稀有な事ではないでしょうか。


ツンデレの重巡洋艦「タカオ」とかかなりレズビアンっぽい大戦艦
「ヒュウガ」とか。いつも大きめのコートの中に納まってる「ハル
ナ」などなど・・・。


©Ark Performance/少年画報社・アルペジオパートナーズ


メンタルモデルの物語以外にも、デザインチャイルド(このネーミ
ングも素晴らしい)として作られた「生命」である刑部蒔絵の存在
など、色々な、「ヒト」とは?「心」のつながりとは?といった問
題が作品の中で繰り返し提起されていきます。


テレビ版のエピソードで蒔絵を生み出した科学者の刑部藤十郎は、
その最後で「さようなら、蒔絵。私の愛する愛しい娘・・・。」
というセリフをつぶやきますが、リアル娘のいる人にとってはかな
りグッときました。


テレビ版でも、十分すぎるくらい、美しいドラマパート、戦闘パー
トが展開されましたが、劇場版「DC」の新作パート、完全新作の
「カデンツァ」は正にテレビ版からさらにグレードアップした映像
を見せてくれます。


新キャラも多く、特に、「霧の生徒会」は、戦艦で生徒会?何それ
?という面もありながら、それは霧の艦隊の一部が人間の生活形態
を模して霧の艦隊としての規範統一を図っているのだという説明が
あって、なるほど、それもありだな、と思わせてくれます。



©Ark Performance/少年画報社・アルペジオパートナーズ

「霧の生徒会」のメンタルモデルたちもそれぞれが個性的で魅力的
なキャラクターたちとなっています。

©Ark Performance/少年画報社・アルペジオパートナーズ


特に、「アシガラ」は明朗快活な感じの体育会系キャラで、敵なが
ら実にサッパリ、気持ちよい戦闘シーンを展開してくれます。



©Ark Performance/少年画報社・アルペジオパートナーズ

このあたりのシーン演出をしたのが「ご注文はうさぎですか?」の
監督でもある橋本裕之さんで、美少女とメカものの演出はお手の物
というのも知りました。


そういった魅力的なキャラクターに正に「命」を吹き込んだ声優陣
の充実、熱演も忘れてはいけません。


メインヒロインのイオナを演じた渕上舞さん。動画などの自己紹介
では「○○役の渕上舞だよ~。よろしくねー。」などほんわかした
感じで登場する方ですが、「アルペジオ」では潜水艦、大ヒットし
た「ガールズ&パンツァー」では戦車とミリタリーに縁のある作品
でのヒロイン役が続きました。(次は飛行機?)

©Ark Performance/少年画報社・アルペジオパートナーズ

劇場版でラスト、イオナは○○○というふうに(ネタバレ自主規制)
なってしまうわけですが、当初、渕上さんは乙女心的に納得いかな
い!と言い続けていたそうです・・・。


脚本家の上江洲誠さんは、渕上さんが女性の視点でそういう風に感
じたということはなるほど、そうだよなあ、と思ったそうですが、
その映画の試写会の後、乾杯のさなか、渕上舞さんをイオナとして
その顔をみられなかった、とか。

©Ark Performance/少年画報社・アルペジオパートナーズ

劇場版のラストについては、相手役だった興津和幸さんは、劇中
イオナへの感謝の言葉を言うシーンが無かったため、試写会後、
イオナ役の渕上さんにボソッと「ありがとう。」の言葉を伝えたの
だとか。


どれだけ登場人物に感情移入していたのか、という証明でもある
と思います。


メンタルモデルの一人である「ハルナ」を演じた山村響さんは劇場
版ディスクのオーディオコメンタリーで涙声ながらに「この作品に
関われて本当に良かった・・・。」とその心情を吐露しています。

©Ark Performance/少年画報社・アルペジオパートナーズ

他の声優さんたちもみなそうです。


劇場版で「アシガラ」を演じた三森すずこさんも、気持ちよく演じ、
気持ちよく見られた!とキャスティングに感謝していました。


©Ark Performance/少年画報社・アルペジオパートナーズ


大戦艦「キリシマ」は劇中登場後、すぐにクマのぬいぐるみ「ヨタ
ロウ」に変わってしまうのですが、人型時の、最後の後悔を口にす
るセリフだったり、クマ形態での戦闘時の熱演など、流石の芸達者
ぶりを担当声優の内山由実が発揮しています。(内山さんは「リ:
ゼロから始める異世界生活」でも猫型のキャラクターを演じたりと
色んな役を演じていらっしゃいます)


©Ark Performance/少年画報社・アルペジオパートナーズ


キリシマに関しては必ず、ヨタロウ形態でのコミカル担当のイメー
ジがあって、当時、色々とイジられたようです・・・。


劇場版では、ラスボスとして、超戦艦「ムサシ」が登場しますが、
これを演じるのはベテラン、釘宮理恵さん。

©Ark Performance/少年画報社・アルペジオパートナーズ

僕も大好きな声優さんの一人ですが、速やかなハーフトーンのロリ
ータボイスですが、「ムサシ」では可愛らしさもありつつ、凄味と
いうか、聞いていて怖くなるような流石の貫録を見せつけていまし
た。


劇場版での物語のカギを握る超戦艦「ヤマト」を演じた中原麻衣さ
んとムサシ役の釘宮理恵さんのお二人は、ほとんど演技の変更がな
かったくらい、流石のベテランぶりを発揮されていたようです。

©Ark Performance/少年画報社・アルペジオパートナーズ

この作品、実はその映像の殆どが3DCGで制作されています。


背景画であったり、一部の動画が手書きであったりはしているよう
ですが、キャラクターまでセルルックの処理を施して制作された
のはこの作品が殆ど世界初と言っていい試みです。


近年、アメリカで制作された、キャラクターデザインが日本のアニ
メのキャラクターに寄せた3DCGアニメが公開、テレビ放映され
ていますが、その4年近く前にこの「蒼き鋼のアルペジオ」が存在
していたというのは、驚きです。

©Ark Performance/少年画報社・アルペジオパートナーズ

思えば、3Dモデルでキャラクターを作れば、描く人によってデザ
インが崩れたりする心配も無いし(品質を維持できる)、3Dモデ
ル化することで他の作品への転用や再利用が可能になるなど、色々
とメリットは大きいと思います。


僕自身は、数年前までは「アニメは手書きでなければ!」と思って
いたクチですが、この作品を見てその考えを大きく改めるに至りま
した。


それほど、この作品のインパクトは絶大です。


スタッフが3Dモデルのアニメーションを作るノウハウが向上し
ていくと、自然にキャラクターの感情含め表現が豊かになってい
くのがテレビ版→劇場版と見て行くとよくわかります。


3Dモデルによって映像の均質化はとれますが、演技のさせ方と
かは3Dアニメーターの個性が反映されるのだとか。


手書きのアニメも残っていって欲しいとは思いますが、労働環境
やアニメーターの地位向上のためには、アニメーションの3DC
G化は必須の流れではないでしょうか。


3DCGでも従来のセルアニメと同等の感情表現、映像表現が可
能であるということを、この「蒼き鋼のアルペジオ」は証明して
くれました。


最後に、甲田雅人さんによる劇伴について。


僕は、人生で最初に虜になったアニメが「宇宙戦艦ヤマト」だった
ので、未だにアニメの劇伴の最高峰は「宇宙戦艦ヤマト」だと今で
も硬く信じてやまない人間です。


宮川泰さんによるゴージャスで、人間臭く、情感に寄り添い、音楽
として個性が強くありつつも、映像を着実に支援してくれる氏の数
々の劇伴は、初登場後40年近く経ったいまでも、僕のウォークマ
ンに必ず入っています。


従って、僕がアニメを見るときに気になる部分の一つが音楽、特に
劇伴ということになりますが、中々ヤマトほどの充実ぶりに出会う
事はありません。


劇伴としては必要十分だったり、作家の努力はもちろん分かるので
すが、映像と合わせて、プラス、音楽として鑑賞に堪えるというの
は中々難しいようです。


そんな中でも、名盤と思えるアニメの劇伴はいくつかあります。


古い作品ではありますが、「銀河鉄道999」の青木望氏による
劇場版のサントラ、羽田健太郎氏による「超時空要塞マクロス」
劇場版のサントラは、本当に音楽としての聴きどころも多く、劇
伴としても優れていました。


さて、「蒼き鋼のアルペジオ」ですが、僕がテレビの放映、映画
の公開時ではなく、2017年現在になって注目したのには、こ
の作品の劇伴音楽がきっかけの一つでした。

©Ark Performance/少年画報社・アルペジオパートナーズ


特に、潜水艦イ401が登場するシーンなどにかかる「魂の躍動」
という曲がめちゃくちゃ気に入り、即座にAmazonで完全版
サントラを購入するに至りました。


このサントラは2枚組で完全版と謳っていて、1枚目はテレビシ
リーズ、2枚目が劇場版のサントラという構成になっています。


音楽担当の甲田雅人さんはアニメの劇伴の仕事はこの作品が初め
て。


それまで、ゲームのBGMの仕事をしてきていて、特に「モンス
ターハンター」での「英雄の証」という曲は、ゲームをプレイし
たことの無い人でも聞いたことがあるのではないか、というくら
いインパクト絶大、アドレナリン大量放出の壮大な曲です。


僕は思わずクラシックの有名な曲なのかな?と思ったくらい。


僕の好みとしては、2枚目の劇場版サントラがお気に入りです。


それは、劇場版はテレビ版よりよりエモーショナルでダイナミック
な曲想になっているからです。


でも、それはそのはずで、テレビ版は色々なシーンに付けられるよ
うに汎用性を重んじた作曲になっているの対して、劇場版はよりド
ラマに寄り添ってぴったり合うように作曲しているから、当然そう
いった差が生まれてくるのです。


そうして聞くと、1枚目のサントラも、非常によくできているなあ
と感じる事ができます。


あ、この曲はあのシーンで使われていたなあ、と思い返しつつ鑑賞
することができます。


劇場版では、テレビ版のモチーフ(特にイ401の戦闘のモチーフ)
も折り込みつつ、新しい試みもチャレンジされています。

©Ark Performance/少年画報社・アルペジオパートナーズ

特に、「ムサシのテーマ」に見られる妖しい音の響き。


恐らく、和楽器の鉦鼓と呼ばれる金属音の打楽器や太鼓などの和風
の音がフィーチャーされていて、劇場版「カデンツァ」のメインテ
ーマにも取り入られています。


但し、楽器が和楽器を取り入られているというだけで、曲自体はど
ちらかと言えば西洋音楽の楽想になっています。


「ムサシ」のテーマをバックにムサシのメンタルモデルが艦橋から
ふわっと甲板まで下りてくる登場シーンは極めて印象的な妖しい感
じのシーンになっています。


よく考えると、こういった「妖しい」音楽って劇伴で聞く事って中
々ないような気がします。


思いつくのはやはり、「宇宙戦艦ヤマト」の宮川泰氏の音楽にはそ
ういった、異国情緒というか、艶めかしい音楽があります。


そして、劇場版「カデンツァ」を彩るメインテーマ曲。


この曲は映画の冒頭とラスト近くに異なるアレンジで流さます。


僕の解釈では、「ヤマト」と「ムサシ」の関係性が主にあった構成
になっていて、冒頭のアレンジは、悩み傷つき、人類への敵意をむ
き出しにする「ムサシ」のテーマがメインとなって、途中に立ち上
がる、それでも人類との共生を望む「ヤマト」のテーマを打ち消す
ような構成になっています。


©Ark Performance/少年画報社・アルペジオパートナーズ


ラスト近くに流れるアレンジでは、最終的に「ムサシ」の悲しみま
で抱擁して浄化していく「ヤマト」のモチーフが全体を包み込みま
す。


このアレンジは、ヤマトVSムサシという超重量級の戦艦戦のシー
ンで流されます。

©Ark Performance/少年画報社・アルペジオパートナーズ

サントラで音楽だけ聴いていると、その後のイオナの結末も含めて
思い出され、思わず号泣してしまいそうな感動的な曲になっていま
す。


サントラを聞きながら、先に僕があげた「銀河鉄道999」「超時
空要塞マクロス」の劇場版のサントラに比肩する名盤であると思い
ました。


聞けば、甲田雅人さんは「宇宙戦艦ヤマト」や「スターウォーズ」
の劇伴のファンとの事で、なんとなく、ヤマトの音楽と共通した
個性を感じ取れたのは、そういう事か!と納得です。


本当に、この十数年来、買ったサントラでは最高のクオリティー
の作品でした。


スタッフ、キャスト、ともに、作品に参加できた喜びと感謝を隠
すことも無い作品ですが、それを見させてもらった僕たちファン
も、こんな良い作品を届けてくれて、「ありがとう」と感謝する
気持ちでいっぱいになる、そんな作品。


それが、「蒼き鋼のアルペジオ」です。