多くの外国の方とお会いする中で非常に気なったことを元に少し整理してみました。
ざっくりいうと、
「日本で在留資格どおりに動けているか」
「会社との契約(就業規則・誓約)を破っていないか」
この2つを外すと、国内にいること自体が一気に難しい状態になります。
個人事業としての副業と、単なるアルバイト的な副業(労働者としての兼業)でポイントがかなり違うのですが、会社としても気にするべきことになりますので参考にしていだければと思います。
大前提:在留資格ごとの限界ライン
① 就労系在留資格(例:技術・人文知識・国際業務 / 経営・管理 / 特定技能など)
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在留資格の「活動内容」から外れる仕事は NG
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例:
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「技術・人文知識・国際業務」で ITエンジニア → OK
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その人が個人で居酒屋のホールを手伝う(アルバイト)→ 資格外活動になる可能性高い
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原則として、本来の在留資格の内容と同じカテゴリーの仕事なら複数社OK(雇用契約でも業務委託でも)。
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ただし、雇用主変更や兼業が入管にどう見られるかは要注意(本業の実態が薄くなると「在留目的逸脱」と判断され得る)。
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② 留学・家族滞在など「就労が副的」な在留資格
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資格外活動許可がない副業=原則アウト。
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資格外活動許可があっても
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原則:週28時間以内
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かつ「風俗営業関連」などの業種は禁止。
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個人事業者として稼ぐ場合でも、「実質的には就労」と評価されるので、
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「個人事業だからセーフ」という発想は危険。
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「労働者としての副業」の注意点
① 在留資格との整合性
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副業先の仕事内容が、自分の在留資格の活動内容に合っているかを確認。
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例)「技人国」で
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本業:マーケティング職
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副業:別会社でマーケ・翻訳業務 → 比較的説明しやすい
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副業:コンビニのレジ・工場ライン → 説明がつきにくい(リスク高)
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② 労働時間・社会保険の問題
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複数社で働くと、実質の労働時間が過労ラインを超えていないか、労基署的な意味でグレーになることがある。
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一定条件を満たすと社会保険(厚生年金・健康保険)の加入義務も絡むので、
「副業だから全部アルバイト感覚で…」は危ない。
③ 就業規則・誓約書
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多くの会社は就業規則で副業禁止 or 事前許可制。
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外国人の場合、
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「在留資格更新時に、会社が“主たる活動”として協力してくれるか」
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副業が原因で会社との信頼が崩れるリスク
も見ないといけない。
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「個人事業主としての副業」の注意点
個人事業は「独立して事業を営む」形になるので、入管的には「経営・管理」やフリーランス就労の扱いに近くなるところがポイントです。
① 在留資格と「事業」の関係
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典型的に危ないパターン:
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在留資格:技人国(会社員エンジニア)
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副業:個人事業として飲食店経営・物販ビジネスなど→ 実態として「経営・管理」活動に近づくと、「今の在留資格の枠を超えている」とみなされる可能性。非常に多いです。
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比較的説明しやすいパターン:
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在留資格:技人国(システムエンジニア)
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副業:フリーランスとして他社の開発案件を受託→ 「同じ専門分野」「本業の延長」なら、まだロジックが組みやすい。
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② 収入バランスと「主たる活動」
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個人事業の売上が本業より大きくなり、
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「名目は会社員だが、実態は個人事業がメイン」と見えると、
→ 在留目的逸脱のリスク。
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入管は「どこで、どのくらい、何をして、どれだけ稼いでいるか」を総体で見ます。
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確定申告の内容ともリンクしてくるので、「税務上は個人事業で大きく利益→でも在留資格は会社員のまま」は要注意。というか感覚的にはアウトです。移行期間などの説明がしっかりできているなど理由説明が合理的にでき、それがどうしても仕方がないという状況になると良いですがそういうことばかりでもないと思いますので・・・・
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③ 税務・帳簿の管理
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個人事業として副業収入を得るなら、
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開業届(税務署)
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青色申告承認申請(必要に応じて)
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帳簿・領収書の保存
はセット。
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税務調査で「在留資格の活動」との齟齬が表に出るケースもあるので、「税務だけ見てOK」ではなく、入管への影響もセットで考えることが重要。
「副業OK」と誤解されやすいグレーゾーン
① オンラインでの小遣い稼ぎ
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例:YouTube / TikTok / インスタの収益、ブログ広告収入 など
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少額で趣味レベルなら実務上あまり問題視されにくいが、
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収益が大きくなり「事業的」になってくると、
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在留資格との整合性
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税務申告
がセットで問題になり得る。
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② ギグワーク・マッチングアプリ系
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Uber、フードデリバリー、クラウドソーシングなど
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実態としては「労働」にかなり近いものも多い。
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在留資格によっては「単純労働」と評価されアウトの恐れ。
会社側(雇う側)から見たリスク
あなたが会社やクライアント側を支援する立場の場合に押さえておくべきポイントです。
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在留カード上の資格と仕事内容が合っているか
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雇用契約書・業務委託契約書に
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副業の扱い
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秘密保持・競業避止
をきちんと明記しているか。
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「副業OK」にするなら、
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労働時間の把握(過重労働になっていないか)
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情報漏洩リスク(本業と副業の業種が近いとき)
をどう管理するか。
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ざっくり整理:個人事業 vs 労働者としての副業
| 観点 | 労働者としての副業 | 個人事業としての副業 |
|---|---|---|
| 在留資格との整合性 | 「職種」が合っているかが焦点 | 「事業内容」が在留資格の枠を超えないかが焦点 |
| 主たる活動の判断 | 本業会社の就労実態が維持されているか | 個人事業が本業を上回ると危険度UP |
| 会社との関係 | 就業規則違反・秘密保持・競業避止 | 競業・顧客引き抜き・情報漏洩のリスク |
| 税務 | 副業給与として申告 | 事業所得として申告(帳簿必須) |
| 入管からの見え方 | 「複数雇用として妥当か」 | 「実態は経営・フリーランス就労では?」 |
実務的なチェックリスト(外国人本人向け)
副業を始める前に、最低限これは確認・整理しておくと安全度が上がります。
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自分の在留資格の活動内容を日本語または英語でちゃんと読んだか。
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副業の内容が、その活動内容から大きくズレていないか。
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勤め先の就業規則・雇用契約で副業が禁止されていないか。
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副業を始めても、
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本業の勤務時間
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本業でのパフォーマンス
を落とさない自信があるか。
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収入が増えたときに、
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確定申告
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社会保険
をどうするかイメージできているか。
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将来、在留資格を更新・変更するときに説明できる構成になっているか。
行政書士・顧問として提案できること
外国の方向け、また外国人の雇用をしている企業さまむけには下記のようなことが可能ですのでお気軽にご相談ください
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「副業・兼業チェックパック」
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在留資格 × 副業内容の適合性診断
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会社側の就業規則・誓約書の確認
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税務・社保対応の専門家へのブリッジ
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「将来の経営・管理ビザを見据えたロードマップ」
いきなり個人事業で攻めるのではなく、 本業で実績 →同分野のフリーランス収入を少しずつ積み上げ →一定規模になった時点で「経営・管理」への切り替えを狙う設計などが良いでしょう
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企業向けには、
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「外国人社員の副業ルール整備パック」
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就業規則の改定案
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副業許可のフロー
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入管リスクを織り込んだガイドライン作成
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CCMOコンサルティング
徳川綜合法務事務所
行政書士 石川裕也
お問い合わせは
ccmoconsulting@gmail.com