無知とは罪?知らぬが仏? | あづまの書斎

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基本的には私が読んで面白かった本のご紹介です。
時々、時事や身の回りの出来事なんかもお話させていただきます。

お酒飲める? ブログネタ:お酒飲める? 参加中

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お酒は結構好きな方で、知っている人は知っているのですが、『え、こんな時間に飲むの!?』 って驚かれたこともあります (念のため申し上げておくと、真昼間っから飲んだのではないですよ)。
全く自慢にはなりませんが、割となんでもいける口で、ビール、焼酎はもちろんのこと (あ~、でも、芋焼酎はあの匂いがちょっと苦手かな)、日本酒、ウィスキー、カクテル、マッコリと、何でも来い状態。

ですが、ワインだけは手を出していません。
と言うのも、(何もワインに限った話しではないのでしょうが) やっぱり、味わいと値段が比例することを思い知らされた経験がございまして、どうしても比べてしまって楽しめないんですよね。
と言う訳で、その馥郁たる香りと嫌みのない渋味を味わう事となった経験についてお話しさせていただきます。



今から3年ほど前の事。

私がとある事案の解決に力を尽くした後、関係した調達部門のA課長からお礼にと、取引先からもらったとかいうワインをいただきました。

このA課長は、経理部門内では難物と認識されている御仁で、彼ら調達部門には彼らなりの言い分があるのは分かりますが、適切な経理処理のために是非とも調達部門にやっていただかなくてはならない業務についても、とにかく余計な仕事はしたくないの一点張りで、普段から随分と手こずらされているのですが、一転、こんな面もあるのかと意外に思いました。


『俺はビール、日本酒しか呑まんからワインは分からん』 と主張していましたが、かわいそうにA課長、日ごろの不摂生がたたってか健康診断で肝臓の数値が引っかかり、医者からお酒を止められているとの由。

心の中で 『天罰だ。ザマミロ』 と舌を出しながら、厚かましくもいただいてしまいましたが、私に多少なりともワインの知識があれば、ラベルの 『LES FORTS DE LATOUR』 の文字を見た瞬間に 『いただきます』 と気安く答えたことを後悔していたでしょうし、A課長もワインの知識があれば、これを担当者レベルのよその課の社員に気前良くポンと渡すようなことはしなかったでしょう。


いただいたその日は帰宅したのが遅かったので、特に調べる事もせずにクローゼットに入れておいて翌日改めてどんなものかを調べる事に。

『贈答するものだからそこそこ良いものなんだろうな』 くらいの軽い気持ちで、楽天で 『LES FORTS DE LATOUR』 で検索してみると・・・・・・15,000円ですとぉ!?(あくまでも3年前にいただいたモノの当時の値段。現在では、醸造(?)年にもよりますが、大体20,000円を超えています)


という事で、少々厄介なことになりました。

もちろん、もっといいお値段のするお酒がある事は知っておりましたが、だからと言って 『呑めないからあげるよ』、『じゃあ、いただきます』 というようなノリでやり取りするようなものでもありません。

いただいたものを返してしまうなんていう失礼なこともできませんので、A課長には別にそれなりの物をお返しするとして (A課長も知らずにやってしまったのでしょうから、『それなりの物』 とは言っても慎重に選ばないと・・・) 『知らない』 ってコワイなぁ、と、つくづく思い知らされました。



で、肝心のお味はどうだったか。

色々な意味で一人では飲みきれませんでしたが、私がA課長からワインをせしめたことは経理課内では知れ渡っており、しかし銘柄とどんなワインなのかと言うところまではみんな知りませんでしたので共犯者づくりには事欠かず、以前の記事で紹介した黒江さんご夫妻 (当時は新婚ホヤホヤ) 主催のホームパーティに持ち込んで、親しい経理課の同僚達と一緒に飲むことに。

コルクを抜くときに、みんなでA課長が健康診断で引っかかってお酒が飲めないという事を 『天罰だ』 などとネタにしつつ、まずはワイングラスに少量ずつ注いでテイスティング。


最初にグラスの中でゆっくりとワインを回し、グラスの中に鼻を突っ込むようにして香りを味わいます。

ものすごくいい香り。

それまで飲んできたワインが直線的すぎる香りとすれば、これは、確かにワインの香りなのですが、育ったボルドーのブドウ畑の土とか、詰められていた樽の香りまで含まれているような、ワイナリーの風景を思わず想像してしまうような重厚な香り。(陳腐な表現かもしれませんが、生憎と私はソムリエではございませんのでお目こぼしを)

みんなが呑気に 『いい匂いだね(^▽^)』、とやっているそばで、黒江さんの旦那さんであるB氏はグルメで通っていたのですが、この時点で手にしているのが相当なモノである事に気付いたそうです。


で、いよいよ最初の一口。少し口に含んで噛むようにして味わいます。


「・・・・・・・・・」


全員沈黙。

ややあって、B氏の 「どうやら全員、あづまさんにまんまとハメられちゃったみたいですね」 という感想が私を除く全員の心境を余すところなく表していたと思います。

その後、皆、半ばヤケクソの心境で美味なワインを賞味したのでありました。


いやぁ、確かに美味しかった。それまで飲んだことがある、せいぜい3,000円どまりのワインとは桁違い。分かり易い味を 『スッキリしてて飲みやすい』 などと言っていたのが恥ずかしくなりました。

一言でいえば 『芳醇』 なんでしょうけど、上記の 『分かり易い』 を意識すれば、『何層も折り重なっているような』 という例えになるでしょうか。

白と違って赤は渋味があるのがほとんどで、これも渋味があったのですが、嫌な渋味ではなく非常にまろやかで、渋味が理由で赤を敬遠されている方も、これなら間違いなく飲めると思います。(ただし、上記のとおりお高いです)


こんなことがあって以降、本物を知ってしまったがために、ワインはちょっと飲みづらくなってしまいました。



尚、A課長には神戸に本社を置く某洋菓子メーカーのクッキーの詰め合わせをお返しの品として差し上げました。
『いやぁ、かえって気を使わせちゃってスマンねぇ』 とおっしゃられるA課長は、やっぱり気前よくポンと渡したワインがどういうものであったのかをご存じでない様子で、更にはそのクッキーの詰め合わせに、ワインを飲んだ経理課員全員の、ワインのお返しを仕事で求められることへの恐れがこもっていることも知らなければ、お返しの品の購入費用が、全員を共犯者に仕立て上げた罰として全額私の負担となったことは知る由もないのでした。