田園はこの時期なので、当然土が剥き出しになり、荒涼とした姿を見せている。しかし目を凝らすと、その表面がキラキラと輝いている。
これは水ではなく、夜のうちに降りた霜がそのまま固まり、白く凍り付いたものだ。
年末が迫っても雪が殆ど無く、何だか冬の宮守という感じもしない。もの足りない感覚は抱きつつも、やはりこの小さな田園の中を歩く時間が愛おしい。
足元を見ると、方々に稲の籾殻が撒かれている。雪が降ったときや霜が降りそうな日に、地面の凍結を緩和するためのものだろうか。
田園地帯を貫く目抜き通りから、未舗装の脇道に入る。
あっという間に先程まで歩いていた道が遠くなり、坂の上から小さな田園地帯を一望出来る。
この道の先に、かつて高校の分校があった。このような景色の中で三年間を過ごし得られるものは、都会では得難いものだっただろう。
此処まで来ると、我々の脚は自然と学校に向かう。
グラウンドは所々草が蔓延っているものの、今でも少々整備するだけで使えそうな様子だ。
グラウンドの奥に、懐かしい校舎が見えて来た。
此処にはもう何度も足を運んでいるが、今は役目を終えた建物を見るにつけ悲しみが湧き上がって来る一方で、未だこの場所に暖かみが残っているような気もして、心が静かになるのを感じる。
地元を離れずに学べる場所があることを素晴らしいと考える人たちがいる一方で、より多くの友人や出来事に触れる場所を用意することが子供たちの成長に繋がると考え、涙を呑んで学校の統合を良しとする人たちもいる。そのどちらの考えも理解出来るだけに、少子化の時代にいったいどうすることが正しいのか、もの言わぬ校舎を前にすると考えてしまうのだ。