南部ばやしの一団が通り過ぎてひと息吐いていると、再び鹿踊りの一団が登場して踊り始めた。
早池峰の鹿踊りはさっき見たが、白装束に九曜紋が格好良い個人的に気に入っている団体なので、再び見て行くことにする。
早池峰の鹿踊りの内、装束が白いのは東禅寺と張山だが(残る上柳は昔ながらの濃紺)、その2団体が続けて行列を組んでいるので、民話通りの一角が真っ白に染まったようにさえ見える。何時かの夏に菅原神社で見た、地元団体の揃い踏みの光景を思い出した。
厚い雲の隙間から、僅かながら青空も見えた。白い装束は燦燦と降り注ぐ陽の下でも、霧が立つような蠱惑的な空気の中でも、そしてこの後に来る夜闇の中でも、はっきりと映える。
早池峰の鹿踊りを偶々目撃した柳田さんが遠野物語を遺すことを決意したのだから、彼らは遠野物語の原点に立つ存在の継承者でもあるのだ。この後十年、二十年と時代が進んでも、今見ている光景は変わらずに続いているだろうか。