神輿に続いて神楽の一団が続々と民話通りに入って来た。
神楽の勇壮な仕草に加え、ゴンゲサマが歯を打ち鳴らす乾いた音が響き、とても心地良い空気に満たされる。
鼻が長い猿田彦(天狗のイメージと混同されることも多い)に、巨大な口のゴンゲサマが躍動する神楽の世界は、日常とは懸け離れた世界である。
神楽には子供から大人、老いた人々も一緒になって参加し、剣を振るい、笛や太鼓の音を響かせ、ゴンゲサマの歯を打ち鳴らすその一音毎にその場の空気を異質なものに染め上げて行く。それは過去からも未来からも同じ時間軸に辿り着ける、魔法のような音の響きである。
見知った場所が熱い空気に包まれ、それを見ている我々の足も重力の軛から解き放たれ、ふわふわと宙に浮かんで行くようだ。