遠野放浪記 2015.09.19.-02 友垣 | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

花巻の市街地を離れ、瀬川を渡ると、見慣れた釜石線の車窓と再会出来る。

 

 

 

今回は、嫁だけでなくもうひとり旅の友がいたりする。

 

 

暫くは花巻の都市の香りが残る車窓の風景が続くが、北上川を越えると汽車はいよいよ日本の原風景に入り込んで行く。

 

 

 

新花巻から土沢に掛けては広い棚田がとても美しいが、その一部は水田ではなく、野菜類が育てられる畑だ。土が剥き出しになっている区画では、これから冬や春の野菜を育てる準備をするのだろう。

 

 

 

東和を抜けると、汽車は市境の峠道へ。釜石線の難所といえば仙人峠を越える区間だが、このあたりも山は深く、極端に危険な場所こそないものの秘境っぽさでは引けを取らない。

 

 

宮守の外れに差し掛かると、車窓には黄金色に彩られた美しい田園が見えて来た。

 

 

輝く大地と空の向こうに、分校の校舎もまだ残っている。

 

 

吉金の交差点を過ぎ、めがね橋が見えて来ると、いよいよ宮守の市街地に突入する。

 

 

 

思い出が多い宮守駅のホームを眺める時間は、釜石線に乗る際の大きな楽しみだ。

 

 

宮守駅を出てめがね橋を渡ると、汽車はまた険しい峠道に差し掛かる。何時も宮守との邂逅は一瞬だ。

 

 

 

峠の途中にも水田があり、稲穂がたわわに稔っている。周囲に人の気配はないが、はるばる街から足を運んで手入れをする農家の方がいるのだ。

 

 

柏木平から鱒沢へ、峠を下ると、いよいよ遠野盆地へ。

 

 

 

花巻から約一時間で、遠野駅に到着する。

遠野では殆どの乗客が汽車を降りた。皆、祭りが目的だろう。何時になく高揚した人間の熱気に、蜻蛉も何ごとかと様子を見に来た。

 

 

 

俺も跨線橋の階段を一歩、一歩と踏む度に気分が高まって行く。