遠野放浪記 2015.08.16.-10 好きな景色 | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

汽車は宮城県北の素朴な風景の中を進む。岩手でも宮城でも、北の県境に近い程、野趣溢れる景色が広がるようになるのだろうか。

 

 

線路の近くに高い山がなく、広大と言える程広い田園地帯の空を、薄い雲が覆い始めている。南方では雨が降っているのだろうか。汽車はその雨に向かって旅をしている。

 

 

 

 

このあたりには鳴瀬川を始め、大小幾筋もの川が流れている。水が豊かな土地で、宮城県内でも随一の穀倉地帯だという。

 

 

 

 

小牛田、松山町、鹿島台、品井沼といった懐かしい駅をひとつ過ぎる毎に、大きな街が近付いて来る。東北一の大都会・仙台が何時の間にか目の前である。

 

 

 

 

 

今回は仙台であまり待ち時間はなく、すぐに次の汽車に乗り換えた。次に目指すのは、福島との県境にある街、白石。

 

 

暫く南へ下ると、車窓と並行して白石川が一緒に旅をしてくれる。東北本線で一、二を争うとされる秘境駅の東白石駅は、目の前に白石川が流れ、対岸の街の明かりが感じられる、とても素晴らしい駅だ。

 

 

 

白石の街を過ぎると、いよいよ宮城県ともお別れで、汽車はゆっくりと峠へ上り始める。昔の人にとって、峠や山は今よりも険しく、畏怖すべき存在だった筈だ。峠をひとつ越える度に、新しい街との出会いが待っているのだ。

 

 

 

越河という駅も俺が大好きな駅のひとつなのだが、この越河駅が宮城県内で最後の駅だ。越河の小さな集落を過ぎると、いよいよ県境に差し掛かる。車窓には一本道が横たわり、人の姿はなく、先を急ぐ車がときどき通り過ぎて行くだけである。

 

 

 

このような峠道にも暮らしている人たちがいる。このあたりは俺が訪れると何時も天気が悪いイメージだが、今日も雨こそ降っていないが雲が広がっている。勿論たまたま俺がそういうタイミングに当たっているだけなのだろうが、雨が多い峠の暮らしはどのようなものなのだろうか。

 

 

 

此処が峠のピークで、間もなく福島県に入ると貝田という駅に辿り着く。その先に、また俺が好きな車窓のひとつが現れるのだ。