遠野放浪記 2015.08.16.-09 あの夏の記憶 | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

汽車は南に向けて花巻を出発した。夏の太陽は岩手の山々を照らし、空には白い大きな雲がのんびりと漂っている。寒い季節が長い北東北の、短い夏である。

 

 

 

車窓には街が現れては消えて行く。あそこにはどのような生活があるのか、俺が知る日は何時か来るのだろうか。

 

 

 

生命に満ちた水田、光る川に架かる橋、鉄塔、深い森。その一秒一秒が美しく、俺は一瞬たりとも目に映るものを逃したくない。

 

 

 

県北には野趣溢れる風景が多いが、県南はそれと比して穏やかであり、広い台地が形成されている場所もある。

 

 

 

 

 

黄金の都・平泉の栄華も今は昔だが、直に秋が来ると岩手の全てが黄金色に覆われ、新しい時代の生命の煌めきを見る。それは今後何十年が経っても、俺がいなくなった後でも変わらないだろう。

 

 

 

一ノ関で汽車を乗り換え、岩手県とはこれでお別れだ。