闇の中に宮守駅のホームの明かりが浮かび上がっている。その明かりを頼りに、凍って滑る階段を慎重に上る。
人がいなくなった駅舎に灯る明かりが寂しい。
釜石行きの汽車が来るまでにまだ少し時間があるので、ホームの小屋で待つことに。室内にも片隅に氷が出来るくらい、外気は冷え切っている。
やがて汽車は定刻通りに到着。一緒に宮守駅から乗る客はいなく、孤独な旅に戻ったような感覚だ。
遠くに消えて行く宮守の街の明かりを眺めながら、思う。これまでは私生活でもずっと独りだったし、旅とはそもそも孤独なものであった。それがこれからどのように変わって行くのか、今は未だ想像も出来ない。
切符の券面に印刷される金額も、そのうち2倍になったりするのだろうか。
いろいろなことを考えていたら30分などあっという間で、汽車は極めて順調に遠野駅に到着した。