遠野放浪記 2015.01.10.-10 眼下の星空 | 真・遠野物語2

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この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

俺が明かりに誘われてふらふらと入って行ったのは、駅の隣にあるDeんである。何だか何時も同じ明かりに誘われているような気がする。

 

 

今日も独りでカウンターへ。駆け付けにザクロサワーと自家製の漬物などでひと息吐く。

 

 

メニューを見ていると、2016年開催のいわて国体とコラボした料理コンテストで入賞したというメニューを発見。是非食べてみたいとお願いしたところ、下拵えに時間が掛かるので一時間くらい待ってくれと言われた。どうやら予約しておいた方が良かったようだ。しかし作っていただけるということなので、一時間待つことにした。

その間、賄いで出されたというペペロンチーノやラビオリをいただいた。とても美味い。

 

 

 

60分一本勝負で賄いを平らげ、2杯目の酒を頼む頃合いになって、国体メニューが完成し運ばれて来た。

 

 

これがその逸品、岩手スタミナ飯だ。にんにくベースで味付けされたごはんに鶏の一枚肉、温泉たまご、そして大量の野菜が乗った凄まじいボリュームのメニューだ。元々スポーツ選手向けの食事をコンセプトに開発されたので、栄養バランスも考慮されている。鶏の漬け込みに40分くらい掛かるらしく、準備が大変なのが弱点とのことだが、手間を掛けて作った料理は美味いと相場が決まっている。

 

 

一気に酒が進み、3杯目を発注。また何時もはほぼ必ず最初に発注する鶏の唐揚げも、終盤のタイミングだが発注。これを食べると遠野の夜を迎えた感覚が出て来る。

 

 

 

サービスにリンゴをいただき、口をさっぱりさせたところで今日の晩ごはんは打ち止め。何時にも増してたくさん食べた気がするが、女将の情熱が注がれた国体メニューをいただいたので、俺も明日からホームラン王を目指して特訓することが出来るだろう。

 

 

外に出ると、丁度他で飲み終えて来たという地元の友人・C氏(仮名)がふらふらと歩いていた。互いにかなり酔っていたが、折角此処で会ったのだからと、駅前のさがみで締めのラーメンを食べて帰ることにした。

 

 

C氏は辛味噌ラーメン、俺はつけ麺を発注した。しこたま酔っぱらっていたとはいえ、今思うとよくこんなに食べられたものだ。このあたりから、俺の腹回りは次第に成長を始めた気がする。

 

 

 

その後、俺は遠野の定宿にしている光興寺のくら乃屋さんに向かうべく、タクシーを呼び止めた。本当は散歩がてら歩いて行こうと思っていたのだが、C氏が途中まで同じルートなので一緒にタクシーに乗ることにしたのだ。

C氏は無事に自宅に帰って行き、俺は宿に辿り着いた。そしてこれを書いていて、このときのタクシー代をC氏から貰っていないことを5年半越しに思い出した(笑)

 

 

くら乃屋さんは光興寺の高台にあり、坂の上から振り返ると遠野市街地の夜景が拝めるのだ。手前の暗いところが松崎の田園で、猿ヶ石川を挟んで早瀬の街並みがある。派手な夜景ではないが、俺はこの場所から見る遠野の夜が好きなのだ。

 

 

暫く夜景を眺めていたが、先程から雪が降り始めていて非常に寒いので、早く中に入ろう。

 

 

 

もう日付が変わる前ということもあり、御主人たちは就寝していた。テーブルの上に、泊まる部屋と明日の朝食の時間を知らせるメッセージを残してくれていた。ともすればメールで済む内容を、わざわざ手書きのメッセージとして残してくれているという心遣いが有り難い。

 

 

遠野の他の宿にも何度か泊まったことはあり、それぞれ良い宿であったのだが、くら乃屋さんのご主人と女将さんに会うのは遠野に泊まる楽しみのひとつでもあるのだ。おふたりと看板猫のテテ(2018年に召天)には、明日の朝目覚めたら会えるだろう。