遠野放浪記 2014.11.23.-13 終末点 | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

溜池に別れを告げ、俺はこの道の終着点である大峰鉱山を目指す。

それはそのまま、遠野の製鉄文化における終末点を目指す旅でもある。

 

 

 

この先は一層険しい山道になり、とてもこの先に製鉄の街があったとは信じられない様相である。しかしながら大橋や九州の端島など、現代の常識に照らしても信じられない程の人口密度を記録した製鉄の街は歴史上に多く存在する。

 

 

 

 

鉱山までもうあまり距離は無いが、最後のひと踏ん張りだ。

 

 

 

少し歩くと、脇道に佐比内鉄鉱山遺跡展望台と書かれた標柱があるのを発見した。立てられてからかなりの年月が経っているようで、ボロボロだが、既に佐比内鉄鉱山「遺跡」であったわけだ。

 

 

脇道は少しだけ盛り上がった丘に続いていた。

 

 

行く先には赤い鳥居と手水鉢があり、丘はどうやら神社の境内のようだ。人が住んでいた時代にはこの場所が心の拠りどころだったのかもしれない。

 

 

 

佐比内鉄鉱山遺跡の解説がある。この場所までどれだけ多くの人が訪れるのかはわからないが……。

この解説板が設けられたのが1983年、俺が生まれる前の年だ。その遥か以前に佐比内鉱山は鉱山としての役目を終えており、俺が生まれたときには既にこの世に存在していなかったのである。

 

 

丘は一応、展望台ということになっているが、30年以上のうちに木が成長したのだろう。眺望はあまりなく、眼下に猫川と溜池が見える程度だ。

 

 

 

なお、神社は山神様だった。鉱山労働も山の仕事であるから、男たちは毎日の無事を山神様に祈ったのだろう。

 

 

鉱山はもう目と鼻の先だ。最後のカーブを曲がると、俺の今日の旅も最後の山を迎える。

 

 

遠野物語が世に出るよりもさらに半世紀前、この場所にも遠野の夜明け前の物語があった。今はもう続きが語られることはなくなってしまった物語だが、俺がその夢の跡を目に焼き付けることで、多少なりともその名も無き主役たちの姿を現代に知らしめることが出来るだろうか。