遠野放浪記 2014.11.23.-04 祈りの道 | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

山に近い、集落の外れの小さな森に、俺の腰程の高さしかない小さな御社が立てられていた。

 

 

 

赤い屋根の祠は御稲荷様で、隣には水神の石碑があった。御稲荷様と水神信仰の間には密接な関係があり、特に農耕を営む人はこれらの神を篤く信仰する。

 

 

その隣には、明神と銘打たれた石碑と、鋭く尖ったような形の石碑がある。

 

 

さらに、小さな石造りの御稲荷様の祠と、不思議な形をした石碑……というか、人の手で作られたものではなさそうだが、ひと塊の岩が一緒に安置されている。

 

 

恐らく自然にこういう形になったのだと思うが、ふたりの人が仲睦まじく寄り添っているようにも見え、これは大切にするべきものだと発見者がこの場所に祀ったのではないだろうか。

 

 

この岩が先にあって後から御稲荷様が勧請されたのか、御稲荷様が坐す神聖な土地に後から岩を祀ったのかはわからない。

 

 

明るい朝の日差しに照らされ、朱色が強く輝いて見えた。

 

 

さらに山を目指して進んで行く。このあたりは山に近い場所でありながら、比較的開けた土地であり、集落が成り立ち人々は田畑で稲や野菜を生産しながら暮らしている。

 

 

 

雨上がりの道が太陽に照らされ、旅人を導くかのように光っている。電信柱が永遠に続くかのように立ち並び、奥には人里の終わりを告げる深い山々が聳えている。

 

 

家の姿はそう多くなくとも、人々は貴重な山間の平地で土を耕し、信仰の中で生きて来た。その最たる拠り所が、青笹や上郷の人々にとっては六角牛だ。

 

 

 

山に向かって長い道が延び、奥には墓地がある。集落を見晴らすことが出来、且つ少しでも母なる山に近い場所で御先祖様には眠って欲しいという、人々の祈りが集約する場所だ。

 

 

地上の街よりも、生と死が身近にある土地である。俺はその歴史の上を歩いているのかもしれない。