小牛田駅の跨線橋から街の様子が見渡せる。駅の近くには新しい家や建物が多いが、そのすぐ向こうにはやはり広大な田園が広がっており、其処には昔から続く暮らしがそのままあるのだろう。
太陽がかなり低くなり、ホームに鉄柱の影が長く伸びている。広い駅の敷地内には貨物が停まっており、今日はもう仕事を終えたのか、静かに眠っているように見える。何だかもの寂しい情景だ。
この先は一気に宮城を抜け、いよいよ北東北の玄関口を目指す。沈む太陽と汽車の追いかけっこが始まる。
汽車は瀬峰、新田、石越といった小さな街を通り過ぎて行く。
石越は宮城県内最後の街で、駅から2kmくらい先は岩手県である。県境の街は栄えるという理論に従い(?)石越は仙台以北では一番の賑わいが見られる。
夏川という小さな川を越えると、其処は遂に岩手県。晩秋の黄昏の光と影が、何もないイーハトーヴの大地で夜語りを始める。
汽車は油島、花泉、清水原と県南の街を通り過ぎ、再び宮城県の有壁を経由し、一ノ関駅に到着する。愛と哀しみの大地に、今回も独りで降り立った。