福島市は福島県の県庁所在地でありながら、県の最北端に位置する街であるため、汽車も福島駅を出ると間もなく宮城県だ。快晴の空の下、見事な山河の風景に見送られて汽車は北へと進む。
市街地を出ると間もなく広い田園と果樹園に差し掛かり、次第に線路は空高くへと近付いて行く。
厚樫山から見下ろす風景も、後何度見られるのかわからない。
山を越えた汽車は、いよいよ東北一の大都会・仙台へ近付いて行く。県境の峠は何時も天気が悪いが、今日は珍しく青空が続き、静かな山間にある人々の暮らしを照らしている。
宮城県の最南端にある越河は、小さな街だ。広い田園や山々の間を、街から街へ移動する人々の車が行き交っている。
幹線道路からも外れると、其処にはただ山と空があるだけだ。田畑を耕す人々の生活の様子は伺えるが、殆ど家はなく、街から此処へ通う人々も「山に生かされている」ことを感じながら農耕に励む日々なのではなかろうか。
こうした光景に出会うと、何か懐かしいような、切ないような感覚が胸の奥から込み上げて来る。もしかしたら俺の遠い祖先が北の地方に縁があり、俺のDNAがそう感じさせるのかもしれない。
暫く走って山間を抜けると、また広い平地に差し掛かる。しかし、山というものが人間の生活のすぐ後ろに存在していることを実感する風景だ。
行く手に新幹線の線路が見えて来た。
車窓に見える家の数も多くなって来た。そろそろ県南の城下町、白石が近い。
白石市は仙台の中心部と福島の中心部ともに近く、両県の文化が密接に入り混じる地だという。それはきっと遥か昔から変わっていなく、江戸幕府にも白石城を城として残すことを認められる程、南東北という地方にとって重要な場所だったのだろう。
この土地では、山と人は本当にすぐ隣り同士で生きている。それも恐らく、遥か昔から変わっていない。