郡山から福島までは、それ以前と比べてあまり険しい場所を走ることはなく、遮るものが何もない広大な大地と、遥か彼方に聳える山々と一緒に旅をすることが出来る。あそこに見えるのは、磐梯山、安達太良山、そして奥に吾妻小富士といった並びだろうか。
山の上には早くも雪が積もり始めており、やがてそれがこの荒涼とした大地にも届くだろう。次にこの汽車に乗るときには、白だけに染まった世界が広がっているだろうか。
暫くは空に雲ひとつ出ていなかったが、小さな丘の近くに差し掛かったところで、その陰からひと固まりの雲が姿を見せた。何だか急いで何処かへ行こうとしているような姿だ。
汽車は二本松に到着した。
六角川の畔に、小さな街が広がっている。以前とある機会に二本松駅で下車することが出来たが、実際に街を歩いてからもなお、川と共に暮らす人々の姿には小さな憧れを抱いている。
二本松を出ると、また暫く広い田園地帯の中を走る。
遠くに見えているのは、先程まで眺めていた磐梯山、安達太良山、吾妻小富士を別の角度から眺めた姿だ。北側にはやはり、幾分か雪が目立って見える。
暫くは大きな街もない車窓には、色々なものが見える。名前もない小さな森にひっそりと佇む祠、見渡す限りの水田と山々に囲まれた公園……このまま普通に生きていれば交わることはないだろう人々の生活が、この景色の中にある。
水原川という小さな川を渡り、松川の街を過ぎると、車窓は次第に福島が近いことが感じられる風景になる。
少しずつ家の数が増え、大きな街が近付いて来る。
福島駅の手前では、新幹線の線路と並走する。高架ではなく地上線なので、何だか集落や畑を分断する壁のように見えてしまうのは俺だけだろうか。
やがて開けた大きな街が見えて来て、ようやく旅の前半戦の山場である福島駅に到着する。此処から先は、北東北を目指す旅だ。