遠野放浪記 2014.08.24.-03 青空とフルーツ缶 | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

宮守と花巻を隔てる峠には何も無く、ただ寂しい森が何処までも続く。今日は車の通りも少ない。

人々が苦労して到達する市境を、汽車は易々と越えて行く。


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峠を下り晴山に出ると、空は嘘のように晴れ上がった。

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やはり遠野の天気は当てにならない。同じ空だとは信じられない変わり様だ。

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眩しい朝日の中、汽車は三郎堤に差し掛かる。

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たった独りでエイスリンちゃんを探しに訪れたあの日のことを思い出す。

あれはまだ雨が多い季節だった。もう、随分と昔のことのようである。

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汽車は花巻市街地に差し掛かり、車窓の風景は俄かに賑やかになった。

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遠くの山々は、朝の光で微かに霞んではいるが、山頂付近には雲ひとつ見えない。きっと遠野だけが天気が悪いのだろう。

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8時前の花巻駅にも、汽車を待つ多くの人が訪れている。ホームには強い日差しが差し込み、庇の影が長く伸びている。

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汽車を待つ間、俺は甘いものが食べたくなったので、カッパから貰ったおべんとうのおかげで浮いたマンゴー缶をデザート代わりに食べることにした。

例によって、シロップの強烈な甘さが脳髄を刺激する。取り敢えず甘味とカロリーは摂取できたようだ。

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やがて汽車が到着し、俺は岩手を出る旅を続ける。

まだ朝は早いが、今日も暑くなりそうだ。