遠野放浪記 2014.08.20.-16 サヨナラゲーム | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

野球の練習は軽いウォーミングアップから始まり、各自がポジションに就いての実践的な練習へ移った。藤川さんたちは今度試合があるということで、非常に熱が入っていた。


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俺も高校の頃までは草野球をやっていたので多少の心得はあるが、何せ約10年振り、しかも一段階レベルが上の練習には付いて行くのがやっとだった。辛うじてナックルだけは通用したが……一応試合に向けた真剣な練習を俺が邪魔するわけにもいかないので、一旦ベンチに下がることにした。

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マウンドからは速球が投げ込まれ、バットからは快音が響く。子供の頃は何も考えず、ただ好きに野球をやっているだけで良かった。その頃の懐かしい記憶が甦る風景である。と同時に、大学に入ってからもお遊びレベルででも野球を続けていなかったことがこれ程悔やまれたことは無い。

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最後は藤川さんもマウンドに上がった。彼は一番手のピッチャーではないようだが、速球は先程マウンドにいたエースに負けず劣らず迫力があった。

俺もピッチャーをやったことがあるが、コントロールが悪くてサイドスローへの転向、ナックルの練習といろいろ試行錯誤したっけなぁ……。あの頃は只々楽しかった。

余談だが俺の高校3年間の通算成績は10勝5敗くらい、防御率は3点台中盤くらい……良くも悪くもないが、まあローテーションの谷間に先発するくらいのピッチャーの成績だと言えよう。

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最後のノックには、一応俺が参加しても影響はなさそうなので、参加させていただく。結果的に、本当に野球勘が鈍っていることを実感させられただけに終わったが……。

しかし、久し振りに野球をやったことで心の底から楽しめた。旅先で昨日出会ったばかりの俺を誘ってくれた藤川さんには、本当に感謝している。

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練習が終わり、メンバーは各自の家へ帰って行った。藤川さんと数人の仲間たちは、今日も消防団の詰め所で作業をした後、酒盛りを開くらしい。流れで俺も付いて行くことになり、パティに跨って藤川さんの車を追った。

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俺はまず詰め所の水道で水浴びをし(盛夏でも遠野の水は冷たい!)、こんなところでも童心に帰ってから詰め所の中に入った。

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今日の酒のお供は、ちくわとサバ缶。本当にただ酒を飲むためのアテといった様相だ。

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酒はビールしかなかった。俺はビールがあまり得意でないのだが、折角勧めていただき、しかも遠野産のホップを使ったビールだったので、少しだけいただいてみることにした。

と、思ってよく見たら、東北産のホップではあるが遠野産とは何処にも書いていなかった。

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ついでにこんなものも。

ジャンボフィッシュボーというだけあり、巨大な魚肉ソーセージである。しかもチリ味なので辛い。

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小一時間、俺を含め4人でテーブルを囲んで盛り上がった。俺は主に野球の反省会である(笑)

やがて、藤川さん以外のメンバーは帰って行き、藤川さんも明日の朝早くにまた来ることを俺に言い残して帰って行った。

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有り難いことに今日も座布団4枚を敷き、建物の中で眠れることになった。

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藤川さんと出会っていなかったら、野球を楽しむことも無かったし、こうして雨風を凌げる場所で眠れることも無かっただろう。独りならばそれはそれで気儘にやっただろうが、もしかしたらもっと殺伐とした時間を過ごしていたかもしれない。

今迄はそういう旅の仕方しか知らなかったが、昨日までは想像もしていなかった出会いに恵まれ、今こうして幸福な微睡みに身を委ねている。やはり俺は、旅における運は大変に良いようだ。