遠野放浪記 2014.08.18.-02 最後の足跡 | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

一ノ渡から琴畑までゆっくり歩いて一時間強、その間に集落らしい集落は無い。


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深い森の中へ分け入って行くような感覚で、下界よりも湿気が多く、地面は濡れたままだ。

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時折、険しい峠道の途中にある僅かな平地を利用し、農業を営む人たちの畑が現れる。何軒かの家が近くにある筈だが、集落と呼べる程の規模ではなく、琴畑への道は沈黙に支配されている。

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そんな静寂の旅も終わりが近付き、目の前に突如として何軒もの家が出現する。

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琴畑川の水道施設も見えている。琴畑の集落にようやく足を踏み入れた。

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集落はひっそりとしていた。人っ子ひとり出歩いていない。

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初めて訪れたときから、ずっと変わらない風景が出迎えてくれた。この土地に足を運ぶのも、もう何度目になるだろう。

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琴畑川を挟んで集落はふたつに分かれている。片方は恩徳方面へ続く林道が、もう片方は遠野の終わりへ近付いて行く林道が口を開けて待っている。

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川に架かる琴畑大橋だけが、両岸の集落を結ぶ唯一の道である。

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琴畑大橋を渡り、一本道を奥へ奥へと進む。琴畑集落最奥の家屋を過ぎると、後はいよいよ深い山へと入り込んで行くだけである。

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集落の一番奥に架かる田代橋を越えると、とうとう人の文明社会とおさらばだ。

日本には未だに伝説と幻想に支配され、人の手など及ばない場所がある。そんなことをまざまざと思い知らされる光景が、この橋の向こうに待ち構えている。

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遠野の果てと呼ばれる場所は数あれど、琴畑の最奥は取り分け闇が深い。マヨヒガの主は今、どのような顔で迷える旅人の様子を見ているのだろうか。