遠野放浪記 2014.07.25.-11 残照の中を歩く | 真・遠野物語2

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この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

シロの誕生日の翌朝に此処を歩いたが、あのときは生憎の曇り空だった。丁度水を張った田圃に稲の植え付けが始まったばかりで、これからどういった生命の営みが展開されて行くのか、そういった何かが始まりそうな期待感が滲み出る風景だった。


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あれから2ヶ月が経ち、真夏の夕暮れ。頼り無かった稲穂は大きく成長し、こんなにも美しい景色を作り出していた。

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これからさらに時間が経てば、この稲穂が一斉に黄金色に染まる。そして祭りの秋が終わると刈り取られ、次の春を待つために田園は荒涼とした景色に変わるのだろう――。

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とても暑い日だが、岩手の夏は心地良い。短い夏を象徴するような一日である。

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段々の田圃の向こうに、少しだけ高校の校舎が顔を出した。

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こうして誰もいない場所を独りで歩いていると、いろいろなことを考える。

元々ただ好きだった宮守にこうやって目的を持って足を運ぶ理由が増え、とても嬉しく思った。この日々そのものが、もしかしたら刹那的に、閃光のように燃え尽きる人間のさだめを象徴しているからこそ、狂おしい程に美しいのかもしれない。

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気付けばもう、街側の出口が近付いて来た。

宮守の街の境界にあるこの田園が、夢と現実の境界でもあるように思える。

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いつもとは少しだけ違う、今振り返ると俺にとって特別だった2014年の夏。

そのとある一日が、間もなく終わろうとしている。