遠野放浪記 2014.07.19.-03 霞む旅路 | 真・遠野物語2

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この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

北に向かうに連れ、天気は加速度的に下り坂を転がって行く。


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箱庭のような小さな山里に、夏の雨が降り注ぐ。空気はじわりと濡れ、湿気が肌に纏わり付く。

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遠くの山は厚い雲と雨に隠され、その姿を拝むことは出来ない。

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道を歩いている人はいない。田圃に出て仕事をしている人もいない。

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東北が近付き、御馴染みの白河小峰城が見えて来た。周囲をクレーンが取り囲み、修復の真っ最中。あれから3年が経ち、この街の復興はまだ道半ばだ。

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列車は東北に入り、広い田園を走って行く。しとしとと雨に濡れ、その旅路は霞んでいる。

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汽車もいつもよりも足取りが重い気がする。雨に打たれる小さな街が現れては消え、俺は雨雲と共に北へ向かう旅を続けている。

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郡山から福島へ、列車は岩手県の次に広い福島県を縦断する。道は頼り無げに、しかし確実に北へと続いている。

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もう間もなく、雨と共にある旅も折り返しである。