シロがこの世に生まれて来てくれた素晴らしい一日が終わり、新しい朝が来た。今日からまたシロの一年が始まる。
道の駅のソファでゆっくり目を覚ました俺は、持参したごはんとなめ茸で朝ごはんを済ませた。シロの残り香も霧散し、たった独りで味わう朝食。こんな寂しさもまた良い。
このまま宮守を去るのは余りにも惜しい。帰京に間に合う汽車の時間まで、街を歩くことにした。
めがね橋をくぐり、宮守の街外れへ出てみる。これまで、じっくりとこのあたりを歩いたことは、思い返せばなかったかもしれない。
川向こうの集落にはうっすらと霧が掛かっている。恐らく俺が街を出るまでに雨が降り出すことは無いだろうが、ちょっと寂しい別れになりそうだ。
宮守川の河原に下りられる小道があるので、たまにはそちらを歩くことにした。
釜石街道から一段低く、すぐ目の前に宮守川が流れる道を、不覚にも今まで意識したことはなかった。
この僅かな区画にも、水田が形作られ、人々の生活が形作られている。
このあたりの稲の植え付けはもう終わったみたいだ。街外れの水田は、どうだろうか。
昨日、駅から高校に向かう際に橋を渡ったが、その手前にも小さな橋が架かっている。取り敢えず其処まで歩いてみよう。
地元民しか使わないような小ぢんまりとした橋だが、こちらからも学校や運動公園に行ける。今度はこの道を歩いてみたい。
もう完全に日が昇っている時間帯だというのに、街を覆う雲は濃い鉛色だ。どうにか一日、持って欲しい。