高度を上げ地面の大部分を雪が覆うようになるのと引き換えに、道はか細く頼り無げなものに変わって行った。
本当に微かに人や獣が通っていた場所が確認出来るか、或いは全くその痕跡すら途絶えてしまうかだ。
藪を漕ぎ漕ぎどうにか高い場所を目指して歩くが、途中で極稀にぽっかりと開けた広場に出くわすことがある。荒れ放題ではあるが、かつて人の営みがこのような奥地にまで及んでいたことの名残だろうか。
もう随分と上って来て、相変わらず眺望には乏しいが、周囲の山々が見下ろすような高さにまでなって来たことがわかる。
安全な道などは最早ないに等しい。それはただ山頂へは向かわず、同じくらいの高さを行ったり来たりするだけだ。
決死の覚悟で、兎に角今視界に入る中で一番高い場所を目指すことにした。
背の高さ程にまで成長したクマザサに飲み込まれ、視界を失うことさえある。下る道さえ選ばなければ、確実に山頂まで近付ける筈だが。
果たして俺は今、本当に目的に向けた正しい道を歩いているのだろうか。それすらも定かではない。