遠野放浪記 2014.04.28.-01 雪は止んだ | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

不動明王に見守られて過ごした夜が明けた。

本日の遠野地方は生憎の曇り空。しかしそのおかげで、この時期にしては冷え込みが厳しくなかった。


手早く身支度を済ませ、朝ごはんを食べる。今回も瓶詰のおかずシリーズから、まぐろとわさび茎の醤油麹煮をごはんにかけていただいた。よくありがちなサバやサンマの缶詰とはひと味違って、美味い。


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明るい中で明王様の姿を見ると、心なしか少しだけ穏やかな顔をしているように見えた。

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明王様に一宿の礼を言い、不動堂を出た。

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昨日の到着時には暗くてわからなかったが、御堂の裏手に流れる川は想像以上に急だ。

大小幾つもの落差に加え、ごつごつとした岩が其処此処で水の流れを阻み、またそれを跳ね除けて流れんとする激流が立てるどうどうという水音が、早春の山々に木霊して一層その恐ろしさを際立たせている。

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不動堂を出発し、俺は寂しい峠道を只管上って行く。道中、農業用だと思われる作業小屋のようなものが数軒あったりするが、人が暮らしている気配は皆無だ。

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向かって右手には小烏瀬川が並走する。高室あたりで見られる穏やかな流れとは、全く違う表情をしている。

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所々に人々の暮らしの様子が見て取れるようになると、集落は近い。

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やがて一軒の家と、恩徳バス停のポールが見えて来た。

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このバス停が恩徳線の終着点である。しかし周囲には、隣家一軒を除いて何もなく、恩徳集落の中心まではまだ暫く歩かなければならない。この事実を考えるだけで、今現在の恩徳の状況は推して知るべしである……。

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家の入り口をほぼ塞いでしまっていた雪は跡形もなくなっていた。俺が一ヶ月来ないうちに、季節は早足で先へ進んでいた。

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今日の目的地はまだまだ先だ。先ずは恩徳集落まで早めに辿り着きたい。