遠野放浪記 2014.03.24.-07 早春の星 | 真・遠野物語2

真・遠野物語2

この街で過ごす時間は、間違いなく幸せだった。

空の橙はやがて濃い青に取って代わられ、地上には黒い夜の影が降りて来る。


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最後の太陽の光が山の向こうに沈み、家が少ない広大な田園地帯は、夜になると完全に闇に包まれてしまう。

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宮城県から福島県に入り、県境の厚樫山を下り地上に近付くと、眩しい西日を浴びて小さな街が一瞬だけ燃え上がるような輝きに包まれていた。

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気が早い田圃では、既に春の田植えに向けた準備が始まっていた。耕運機の轍に溜まった水の鈍い輝きが、地面とのコントラストを描き出している。

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県北に点在するかつての宿場町を通り、辛うじて太陽の光が残るうちに福島駅へ。レールの音も何処か急ぎ足である風に聞こえる。

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沈む直前の眩しい陽光が、川面に反射している。

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この時間は夜に向けた静かな興奮と、一日の終わりに向かう寂しさが心の内に綯交ぜになる。

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黄昏色の光の筋と化した川を幾つも越え、ようやく列車は福島駅に到着する。

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長い旅路はまだやっと半分を過ぎたところだ。