釜石街道に出て、後は街に帰るだけだという段になってようやく空が晴れて来た。気温も幾分か上がり、ようやく心地良い春の空気を感じられた。
そんな釜石街道の脇に、小さな赤い鳥居が立っているのを発見した。
例によって、一角だけこんもりと生い茂った木の奥に御社が立っていたのだが、銘は打たれておらず、鳥居も大通りから少し奥に入った場所にあるため、意外に気付かない。
祭壇は小奇麗に整えられており、付近の住人によって大切に手入れされていることがわかる。
何が祀られているのかはわからなかったが、御社は結構立派な造りであり、何か深い由来があるのかもしれない。
御社の裏手には農地が広がっている。今はまだ、深い雪に覆われたままだ。
暖かい日差しが少しずつ冬を解かし、やがて春を呼び寄せる。一ヶ月後には、この御社の前にはどのような風景が繰り広げられるのだろうか。
この場所にも俺が知らなかった物語があることを知り、俺は先へ進む。
何時の間にか街が近くなり、行き交う車の量も増えて来た。
僅か一日しか離れていなかったのに、何故だかとても懐かしい。